Vol.702「日本企業から外国人社員が消える日」(メールマガジン「人事の目」より) 

「内なる国際化」。2004年のNHKBSのお正月番組で私が掲げたメッセージです。
司会の関口博之さんから「日本企業に向けてのメッセージをお願いします。」と言われ、
下手な色紙を掲げて「内なる国際化」と発言しました。

あれから14年。内なる国際化は依然として日本企業の課題です。売上に占める日本以外の
国からの金額割合はかなり増えました。半分以上という日本企業も珍しくなくなりました。
事業はかなりグローバル化しました。

しかしながら、組織は依然としてグローバル化していない。これが実態ですね。

日本企業で働く外国人社員から次の意見、不満、ときに嘆きを聞きます。

・自分を活用しきれていない(充実感ある仕事をしていない/貢献させてもらえない)
・自分はあたかもグローバル化の“Token”(象徴)として雇われているだけな気がする
・日本人になれというプレッシャーを感じる

買収した外資系企業の役員クラスの声ではありません。現場を支える“外国人労働者”の声でも
ありません。普通のホワイトカラー系の社員の声です。

なぜ、日本企業では外国人社員が普通に働けないのか。

日本は“郷に入れば郷に従え”プレッシャーの強い国だと思います。古代ローマにも
“When in Rome, do as the Romans do.”という教えはありますが、これとは次元が
異なるように思います。“そうした方が賢いよ”というアドバイスではなく、
もっと強いプレッシャーがそこにはあるように思います。
“日本人になれ、そうでなければ無視する”。そんな感じです。

この問題は根が深いと思います。
私はこの根底にあるのは日本人のDNAからくる本能的な怖れではないかと疑っています。

われわれは、歴史的に異質な人々と共存する経験値が少ない国民です。ですから、
そもそも外国人は怖いのです。そこに敗戦後の米軍支配と成績を決める英語教育から、
英語ネイティブの白人への劣等感が日本人の精神構造の中に染みついてしまったのではないかと。

いわゆるミレニアル世代(1981年から1996年に生まれた人たち)、Z世代(1997年~2005年に
生まれた人たち)はインターネットが当たり前にある環境、海外旅行が一般化した中で
育ってきています。生活環境的にも“欧米”と同等以上。このため、変な劣等感はありません。
英語を使うこと、外国人と接することに抵抗がないように見えます。

これらの世代が社会の中心になるころには「組織のグローバル化」も普通になっているかも
しれません。問題はここ5年から10年です。日本企業の姿勢が変わらないとすると、奇特な
外国人を除き、日本企業から外国人社員が消える日がやってくるのではないかと案じます。
これは、日本企業がグローバル市場で成長を図ろうとするならば危機的なことだと思います。

日本企業で働く外国人社員は極めてマイノリティです。彼らの声は経営に届きません。
しかし、その声が集団となれば違ってくるだろうと思いました。日本人のDNA的な異質恐怖症を
打ち砕くような企画や機会もマイノリティではできませんが、集団となればできるかもしれません。
彼らには研修もありませんが、集団となればその機会も創れるのではないかと。

そこで日本企業で働く外国人社員を対象とした「Third Way Forum」なるものを立ち上げることに
しました。その第一回の会合を9月10日に行います。みなさんの会社、周辺に日本企業で働く
外国人の方がいらっしゃいましたら、ぜひ以下のURLをお知らせください。発起人は私、
主催はIndigoblueですが、動き始めましたらNPO的に日本に勤める外国人たちの
自主運営団体にしたいと思っています。

このフォーラムが日本で働く外国人にとっての心のオアシスとなり、日本企業が真の
グローバルカンパニーになるための基盤となることを祈念して。

https://indigoblue.co.jp/thirdway/

おまけ:マイノリティといえば「LGBT」もそうです。こちらの方が経験値が少ないので
理解が進んでいないと思います。『カランコエの花』という高校を舞台にしたLGBTについての
映画が、7月14日から20日まで新宿のK’s cinemaで連日15時から公開されます。1時間弱の映画です。

多くの方、とりわけ学校関係者にぜひ観ていただきたい作品だと思いました。

http://kalanchoe-no-hana.com/

※本記事はメルマガ「人事の目」で配信されています。
メルマガ登録(無料)はこちら

関連記事


TOP
TOP