Vol.753「トップを長くやると」(メールマガジン「人事の目」より)

「トップを長くやればやるほど、課題が見えてくる。」

長らく社長を務めている人のコメントです。その通りだと思います。トップになると、
自分自身のレーダースクリーンが常にONになっている感覚があります。次に何が来るか?
その速さは?その強さは?備えはあるか?・・・これがトップ特有の危機感です。
この危機感があるので、いろいろな課題が見える、正確に言うと見えてしまうのです。

こればかりはトップになってみないとわかりません。会社の大小は関係ありません。
トップとして全社員の前に立ったときにスイッチが入るものです。全社員の視線を感じた刹那、
レーダースクリーンが24時間体制になります。社長候補の育成を考えるなら、小さくても
いいので子会社の社長や地域の責任者を経験させましょう。それが一番の鍛錬となります。

このトップのレーダースクリーンですが、年々拡張していきます。トップ経験3年超で
指数関数的に広がる感じです。そうなると2番手以下の人たちの視界とはかなり異なる
風景が見えるようになります。これが“うちの役員たちはわかっていない!”とトップが
苛立つ原因です。

トップのレーダースクリーンが広がる一方でこんなことが起きます。

トップの神格化です。社内の判断基準が社会や顧客ではなく、トップがどう思うかになります。
次第に全社的なことはトップ以外誰も発言しなくなり、上位層は上ばかり見るために横の
つながりが薄くなります。更に自分こそトップの想いを汲んでいるという“茶坊主”が暗躍。
疑心暗鬼の組織感情が生まれ、組織が停滞します。

トップは7年以上やるべきではないと私が主張する理由です。

トップ自身は「神」になりたいとは全く思っていません。周囲が「神」に仕立てるのです。
その方が都合がいいからです。「上」を言い訳にできます。「上」の意向だから・・・、
「上」が嫌うんじゃないの・・・。

組織が内向的になる一方で、トップの視界はますます拡張していきます。しかし、この拡張は
全方位的ではありません。トップの得意領域が突出して広がります。そうでないところは
逆に見えなくなってきます。そうなると下の集団がおかしな忖度をし始めます。
見えていないところは見せないようにするのです。

次第に、トップに入る情報は偏ります。客観的におかしな意思決定をすることになります。
社内の不満が充満し、ある日思いがけない事件が勃発。トップは引責辞任せざるを得ない
状況に追い込まれます。

いい事がありません。総合的に考えると、やはり6年程度トップを務めたらバトンタッチ
するのが良いと思います。

残念な展開になる前に、トップを務めた経験を他社で「顧問」「社外役員」として生かす、
これがトップを務めた人のNext stepだと思います。晩節を汚すようなことになったり、
代表取締役の後にいきなり老後人生となったり、疎んじられながら名誉顧問とかになるよりも、
よっぽど良い選択肢だと思います。


おまけー1:美容師さんに「今日のテーマはドラエモン。ただ、青とかじゃないよ。」と
謎の指示を出して髪を切ってもらっているという人の話を聞きました。すごく尊敬します。

おまけー2:某施設の男子トイレ。あるはずのない高さに「毛」が積まれていました。
2時間後、さらに高く積まれていました。ミステリーです。

おまけー3:8月28日のOT説明会。数年ぶりに私が終日解説します。次世代経営者候補育成、
その見極めを考えている企業の方へ。お待ちしています。(今年はこの回限りです。)

https://indigoblue.co.jp/lp/showcase/

 

 

※本記事はメルマガ「人事の目」で配信されています。
メルマガ登録(無料)はこちら

関連記事


TOP
TOP