Vol.297 顧客価値の源泉を進化させる

ビジネスは創造的破壊の繰り返しだと思います。

きっかけは技術の進歩です。
技術革新によって商品やサービスの提供の仕方が変わり、
より便利になったり、安くなったりします。最初はアタラシモノ好きだけに
取り上げられますが、そのうちにしゃーっと顧客が移動していきます。
高いところから低いところへ水が流れるみたいに、しゃーっと。

このプロセスが創造的破壊です。顧客にとってはありがたいのですが、
既存のプレイヤーたちにとっては脅威そのものです。
なにしろ自分のビジネスモデルが”破壊”されるわけですから。

当然ながら、既存のプレイヤー達はいろいろな延命策を講じます。
しかしそれは焼け石に水。
仮に規制をかけたところで、水の流れをせき止めることはできません。
時間の問題です。

恐ろしいことに、創造的破壊の担い手であっても成長するにつれて、
無意識のうちに”守り”に入ってしまう傾向にあります。
“創造”から離れて、自社の売上規模を守るための戦略や戦術に固執してしまうと、
制約がなく守るものがない「創造的破壊者」にやられてしまいます。
かつて自分がやったことを今度はやられてしまうわけです。

さて、創造的破壊とは「顧客価値の源」は変えずに進化させることです。

“どこにいるかわからない特定の個人に直接連絡する手段”という顧客価値の源を
実現したのはポケベルです。
ところが、ポケベルだと通知できるメッセージに限りがある上に、
「連絡を受ける」→「電話を探してかける」というプロセスを
必要としていたので、技術革新とともに、ポケベルは携帯電話に進化しました。

なにしろ、携帯電話ですと、「連絡を受ける」と「電話をかける」が
一体化していますからね。その方が明らかに便利です。

こうした「顧客価値の源泉」の進化の余地は至るところにあると思います。
特に昔から同じ業態のビジネスにこそ、その可能性が大だと思います。

例えば本屋。
本が売れなくなってきていることはみなさんご存知の通りです。
このため、出版社は大変苦しい状況にあります。
返品率が40%にも上っています。
3兆円分の本をつくって、1兆円戻ってきている、そんな状況にあります。
とんでもない状態です。

そもそも、本屋の顧客価値の源泉は
「情報と知識・教養を自由に得る場所」だと思います。

このうち、情報については、その鮮度からインターネットを通じて
得る方向にシフトしています。
今後もこの流れは加速化するだろうと思います。
キンドルのような配信端末が出てくると、
いわゆるビジネス、ノウハウ本は旬の情報を得る手段として、
ますます配信にシフトしていくだろうとみています。

一方で過去の知識・教養を”本屋”で得るという行動は残ると思います。

“こういう情報が欲しい”とあらかじめ決まっている場合には、
ネットを通じてセグメントを繰り返しながら検索していくやり方が最適です。しかし、
・・・の知識・教養を深めたいという漠然した希望をかなえるためには、
多くのタイトルの中から拡散的に自分で選んでいくやり方の方が向いています。
これはネットではなく、いわゆる”リアル”のお店ならではのものです。

一方でそうなると膨大なタイトルがあるので、なかなか選べません。
そこで、リコメンドがあるとありがたいわけです。
このリコメンド、売り手側のプロモーションとはその性格を異にします。
顧客からの問いかけに答え、いざなうというものです。
だから押し売りであってはいけません。POPやポスター、
“おすすめコーナー組み”はリコメンドではなく、
タイトルプロモーションではないかと思います。

私が思う本屋のリコメンドは昔の書店の親父みたいな感じです。
聞くといろいろといざなってくれる。しかし、買えというお仕着せはない。
本のソムリエなる方がいる書店があるようですが、
そういう感じ。

これは端末でやってもいいですね。
しかし、この端末、大型書店によくあるような、出版社とか著者で
選ぶものではありません。顧客よりのガイドでなければなりません。
となると、顧客のことをよく知っているデータベースとの照合から
ガイドが導かれるものでないと無理ですね。

例えば、38歳のサラリーマン。来週の出張時に持ってく本が欲しい、
というとき、自分のIDを入力。2時間くらいで読めるもの。
ミステリー、途中で止めても大丈夫な内容、とかを入力すると、
宮部みゆき著の「長い長い殺人」などいかが?と回答してくれるような感じです。

それと、知識・教養を得る場所ということに着目したら、本を並べておくだけでなく、
セミナーや勉強会が行われていてもいいかもしれません。
また、体験コーナーがあってもいいかもしれません。

ネットがもっと身近になって、もっと便利になると、
あらかじめ欲しいものがある程度決まっているような買い物、
仕入れみたいなもの、はネットで対応になるんじゃないでしょうか。
となると、リアルのお店はネットとは違う買い物の場所に進化しないと。
そのときの視点は「顧客価値の源泉」を進化させるです。

おまけ:「柴田さん、沖縄の結婚式に参加されます?」「沖縄で?」「いや沖縄の。」

この言葉がとても魅力的で「沖縄の結婚式」に参加してきました。

「沖縄の結婚式、何着たらいいのかな?」「かりゆしです。」(あっさり)

ということで、かりゆしを着ていったところ、ほぼ全員ドレッシーなフォーマル!
さて、私のとった行動は次のうちどれでしょう。(ちなみに私は主賓の一人でした。)

A:かりゆし姿で登場し、大いに目立った
B:あわてて、スーツに着替え、ネクタイなどを調達して着替えて参加した
C:逃げた

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