管理職を”元気でかっこよく”せよ(メルマガ「人事の目」1052号)

とある飲食業界の幹部とこんな会話をしました。

「学生時代にうちの店でバイトをしていて、そのまま新卒で入社するというパターンが激減してます・・・」
「なぜですかね? 会社の知名度もあり、業績もいい。そこで長くバイトしていたなら仕事のこともわかっている・・・。就職先の選択肢になると思うんですが・・・」
「就活中のバイトの子たちと面談したんですけど、みんな口を揃えていいます。店長の働き方を見ているとちょっと無理かなって・・・。」

働き方改革法の施行前と比較すると、管理職になりたくないと考える一般社員の割合が高まっています。JMAM(日本能率協会)調査によると、2018年の「管理職になりたくない」率は 72.8%でしたが、2023年には 77.3% に上昇。法施行後の5年間で約4.5ポイント増加しています

店長など現場の管理職はプレイング・マネージャーであることが多いですね。非管理職に残業をさせられないとしてその分のプレイヤー業務が増加。人を増やそうとしても人手不足から採用も思うように進まない。コンプライアンス強化の風潮から労務管理負担も過重に・・・。

こんな状況下で必死に働いている現場の管理職の姿を見ると、“この仕事、この会社は好きだけど、あんな風にはなりたくない・・・”と思うのは当然です。

「働きたい会社」において、“あんな風になりたい”と感じる社員の存在は、志望度を高める重要な要素になります。いろいろな調査結果を見てみましたが、その影響度は30%台半ばから70%とされています。バイトで身近にいる管理職がその逆だとすると、まず社員になろうとは思わないですね。

日本生産性本部の2021年度調査では、30代の中間管理職層で「心の病」にかかる割合が39.9%で、40代でも27.5%と高い水準にあります。パーソル総研の定量調査によると、負担感の強い管理職のうち 51.1%が高ストレス, 54.7%が疲労蓄積を感じ、23.8%が意欲低下、27.0%が転職意向を示しています。

この状況を放置すると、さらに採用が難しくなります。離職者も増え、管理職の負担が更に過酷になります。現職者の離脱、心身不調の訴えが顕在化し、正常なオペレーションができなくなります。経営として看過できるリスク要因ではありません。

目指すは管理職、特に現場の管理職が“元気でかっこいい”。これは現場の活力の礎です。

報酬を上げる。本社部門や上位職が現場にサポートで入る。これらはすぐできます。労働環境が過酷ならせめて報酬で報いる。昔の炭鉱労働者対策と同じですが、管理職の家族の気持ちも考え、これはやったほうがいいです。現場あがりの管理職が本社にいるなら週1日でもいいので1スタッフとして現場に入ってもらいましょう。ただし、これらは対症療法です。

本質的な対策に踏み込みましょう。現場の“アウトプット”量を減らす(それでいて“会社として困らない”)です。この対策が実効性を発揮するまでは管理職の生体リズムの管理を会社主導でやりましょう。(意識調査だけでは実態がわかりません。)“管理職を元気でかっこよくする”。これは経営課題です。

おまけー1:YouTube収録のために調べて驚きました。あの星一徹は40代だったようです。

おまけー2:「骨なし灯籠」を恵比寿の東京都写真美術館で観ました。静かでハートフルな映画です。「Perfect days」が好きな人には刺さります。恵比寿は6月22日まで。その後、高知、熊本などで上映予定があります。強くお薦めします。 https://honenashi.com/




記事はメルマガ「人事の目」で配信されています。

メルマガ登録

関連記事

TOP
TOP