1056号「経営のメッセージが伝わらない」(メールマガジン「人事の目」)

階層が多くなればなるほど経営の想いは伝わりにくくなります。間にひとり入るごとにメッセージの背景にある意図やねらいは20%程度減衰します。(私の経験則です。)「コスト削減10%」のような単純な数字は伝わりますが、なぜコスト削減するのか、コスト削減を決定するに至った背景などの想いや本質的な情報はどんどん劣化していきます。

1人介するごとに20%減衰すると仮定すると3人介した時点で元の情報の伝達保持率は51.2%、約半分になります。

そもそも人は何かを聞いたときに、無意識のうちに「自分の解釈」のフィルターをかけるものです。ここで発信者の意図と微妙にずれが生じます。このフィルターにより、発信者の情報が勝手に取捨選択され、細部のニュアンスが消えます。情報を伝達する際に、伝達者が自分に都合よく編集することもあります。組織内のポジショントークや保身的行動、忖度です。

発信者のメッセージを直接聞いた人は言葉だけでなく、表情、間の取り方、声のトーン、空気感といった非言語のメッセージを受け取っています。ここに発信者の想いが込められるものですが、間接的な伝達ではこの要素がありません。むしろ、伝達者の解釈による非言語メッセージが伝わります。

社員数が多いとどうしても階層が生まれてしまいます。今後はプロジェクト的なチーム編成がより多くなるでしょう。組織の動きも加速していくでしょう。階層を通じたコミュニケーションに依存していると組織のあちこちにコミュニケーション上の齟齬が生じるようになります。それを放置すると組織感情が悪化し、経営側が良かれと思って行ったことを悪く解釈されたり、反発を招いたりします。

ということなので、経営としてのメッセージを組織に浸透させるには工夫が必要です。極力直接話す場を設けるべきでしょう。(オンラインを活用する場合には、カメラの本数を複数にするほかOBS配信を活用するなどの演出を工夫します。)

ただし、全体集会のような場を頻繁に行うのは現実的ではありません。実務に影響が出ます。そこでお薦めしたいのが「対話の場」の恒常的な企画です。

「対話の場」は就業時間中に設定します。参加者は最多7名まで。年間を通じて、組織内の20%程度の人が参加することを目指します。この対話の場のファシリテーションを行う人(対話ファシリテーター)を置きます。

対話ファシリテーターは事業統括をしていない役員(管掌役員)が全社的な観点から担うのが良いでしょう。雑談を通じて経営の想いが伝わるようにします。そこに“バランサー”として、マネジメント職ではないが多くの社員から慕われているようなシニアの社員に参加してもらいます。議論が対立したり、空転したときにファシリテーターはバランサーに意見を求めます。

「対話の場」のスタート時の参加者の人選は人事で行います。この際、できるだけ利害関係のないメンバーかつ職位をバラバラの構成にします。男女比も社内の男女比を意識した構成が望ましいです。その後は参加メンバーそれぞれに次の「対話の場」のインビテーションを出してもらうようにします。(「友達の輪」作戦です。)

この「対話の場」が毎週決まった時刻に行われているようになると変わります。経営からのメッセージの劣化が改善されます。さらにチームの壁を超えて情報が共有され、コミュニケーションロスが減っていくはずです。お試しください。

おまけー1:自宅近くのコンビニに、“さー、今日はー”、“いよいよー”と大きな声で景気づけをしている店員さんがいます。元気な店員さんだなーと思っていたところ、“今日は、なんですか?”、“と誠実な目で質問しているバングラデシュ人とおぼしきバイトあり。なんて答えるんだろうと聞き耳を立てていたら、“今日は・・・水曜日だ”。

おまけー2:オートファジー16時間ダイエットにチャレンジしているのですが、“あ、僕もやったけど、あとでドカ食いしちゃうから”、“全然痩せない”などネガな意見ばかりもらいます。(ごまめの歯ぎしりだと受け流しています。)

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