働き方改革関連法が施行されて数年。各社はこぞって残業削減に取り組んでいます。私は長時間労働には反対ですが、今の改革は残念ながら理念倒れ。結果として「働かせないためだけの改革」になってしまっているように見えます。
そもそも「働き方改革」は大きく以下を目指していたはずです。
- 長時間労働の是正
- 多様な働き方の推進(育児・介護などに応じた柔軟な働き方に実現)
- 生産性の向上(効率的な仕事の進め方や、業務の見直しによる成果最大化)
つまり、「働く人の健康と生活の質を守りつつ、生産性を上げる」。それが狙いだったと思うのです。
実態はどうでしょう。こんなコメントをよく耳にします。
「残業するな」と言われすぎて、業務量は変わらないのに、働く時間を減らすだけの状況になった。結果として、やるべき仕事が終わらず、プレッシャーやストレスが増した。」
「労働時間や休暇取得に関する法規制が厳しくなり、部下に仕事を割り振りづらくなった。法に触れるかもしれないという理由で、やむなく仕事を減らす=働かせない状況になっている。」
「時間短縮だけで効率化・業務改革が伴わず、単に“働く量を制限する改革”になっている。ルーチン業務や承認フローの非効率を改善せずに時間だけ短縮したので、成果は下がるのに負荷はむしろ増えた。」
「働き方改革=「長時間労働の禁止」と捉えて、リスク回避の風潮となり、本来は挑戦的な仕事に時間を使うべきなのに、「まずは規制遵守」が優先されるようになった。」
由々しき事態だと思います。中間管理職が疲弊し、ますます管理職を指向する女性が減っていきます。成長機会が減少することから、“もっと働きたい”と思う若手が本業よりも副業に専心したり、離職します。。
悪いことにこの状態が“通常”になってしまった感があります。なんとかしようという機運も弱まっていると思いますが、放置してはいけません。更に事態が悪化します。中間管理職の成り手問題、若手の離職に留まらず、人材力が弱まり、結果として企業基盤が揺らぎます。
なんでもそうだと思うのですが、実力を高めようとしたら、ある期間に「量をこなす」必要があります。量をこなさないで質が高まることはないと思います。働けない、ということは仕事の量をこなす機会がなくなるということです。副業でカバーでは、まさしく本末転倒です。
“趣味でやっている”と言い張って仕事をするにしても限界があります。コンプライアンス意識が強い管理職に止められます。(PCもシャットダウンされます。)
腹案があります。組合活動として、プロジェクトを立ち上げ“仕事的なこと”をするのはどうでしょう。組合は組合員の利益(経済的、非経済的)の保護と向上が使命だと思います。賃上げや働環境の改善を訴えるだけでなく、組合員の成長環境の提供にもその活動内容を拡張してはどうでしょう。
私は二十代後半のときに組合活動の一環として「人事制度の改定プロジェクト」に関わることができました。それが現在の礎だと思っています。「働き方改革」により、時間がなくなり検討できなくなっている各種課題に取り組むプロジェクトを立ち上げ、その成果を会社側に投げかけるのです。
「働けない改革」が進行している会社の経営者、組合執行部のみなさん、ご検討ください。
おまけー1:日本語勉強中の外国人から聞かれました。
「おじーさんの若いときはおじさん、おばーさんの若いときはおばさん、
おかーさんの若いときはおかさんでいいの?」
おまけー2:下がってくるエレベータから「ナーン ツィゴンニャー ババギ チババー」という歌声。ライオンキングのオープニング(サークルオブライフ)が聞こえました。エレベータの扉が開いたときに「スチホーン ゲンニャーマー」と応えられたら、最高だなと思いながら知らん顔して乗りました。
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