Global の Practice Leader が家族の都合でシカゴに引っ越すことになったときに、CHROがこう言いました。「シカゴに社宅を用意する。本社(NY)との往復費用はすべて会社が負担する」。
家族都合なのに全額会社負担。当時、米系コンサル・マーサーの Global Leadership Team の会議でこの話を聞き、キーパーソンへの処遇の考え方が、根本から日本とは違うなあと感じました。
役員クラスのキーパーソンには特別な扱いをする。それ自体が「あなたはわが社にとって特別な人財です」という明確なメッセージになります。この特別な処遇のことをPerquisite(通称:Perq) といいます。
内容は多様です。
プライベートジェットの利用、運転手付き社用車、警備体制、家具付き社宅、海外赴任時の家賃全額負担、ラグジュアリー級の医療サービス、税務申告の代理、財務アドバイザー、クラブ会費、子どもの学費補助、役員ダイニングの利用など。
米国では CEO、CFOなどの特定役員に対する10,000ドルを超える Perq は EDGAR で詳細開示が必要ですし、株主の目も厳しくなって縮小傾向にあります。日本では Perq という概念そのものがあまり存在せず、「特別扱い」への抵抗感も根強くあります。
ただし、特別感がもたらす効果は侮れません。一度得た特権を「手放したくない」と思う気持ちは、通常のインセンティブよりも強力です。Perq はリテンションにも、業績向上のモチベーションにも直結します。
多くの企業が、次世代リーダー候補を早期に選抜し、配置や研修、コーチングなどを組み合わせた育成プログラムを実施しています。私もその設計に多く関わっていすし、IndigoBlue の Organization Theater を選抜研修としてご活用いただく場面も増えています。
選抜し成長機会を与える、このリーダー育成の文脈で、Perq をどう設計するか、これも重要な検討要素です。もちろん、プライベートジェットや豪勢な社宅を用意する必要はありません。大事なのは「自分は特別扱いされている」と感じてもらうことです。特別な視察旅行や、通常とは違う研修機会、家族向けの特別旅行パッケージ+特別休暇などで十分に効ききます。
私自身、マーサー入社2年目に Babson College で世界中から著名講師を集めた特別プログラムに参加させてもらい、強烈な特別感を味わいました。
次世代リーダー候補は家族の時間を犠牲にして働くことも多く、だからこそ家族全体を巻き込む特別体験は大きな意味をもちます。テーマパークの VIP アテンドなどは典型的で、家族の喜びがそのまま本人のモチベーションに変わります。
上司から家族に宛てた手紙も効果があります。京王プラザホテル勤務時代、直属の上司から家族に届けられた手紙のことは、今でも鮮明に覚えています。
リーダーシップパイプラインに選ばれた人に、どんな特別感を提供するのか。
この視点も次世代リーダー育成において欠かせない要素なのです。
おまけー1:「ちょっとだけエスパー」(テレビ朝日)をNetflixで観ています。独特なエスパーたちが登場するのですが、動物(昆虫も!)と話す能力は自分も欲しいと思っています。
おまけー2:どう考えても自分にはできませんが、マジシャンはすごいですね。あれもちょっとしたエスパーだと思います。そういう意味では優れたクリエイターはエスパーですね。
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