Vol.287 "かばん持ち"のススメ

ここ2ヶ月ほど、週代わりの”かばん持ち”がついています。
と言っても、文字通りかばんを持ってもらうことはありません。
私にピッタリついて回り、備忘録をつけたり、調べものをしたり、
私の代わりにヒトとヒトをつなぐことしたり・・・、
いわば補佐的な仕事をしてもらっています。

“かばん持ち”はCCCが3年前から実施している
幹部候補生の育成プログラムの一つです。
これまではオーナー経営者のかばん持ちだけでしたが、
今年からは私のかばん持ちもメニューに加わりました。

本年度選抜された幹部候補生は16名。
全員がオーナー経営者のかばん持ちを1週間、加えて、
私のかばん持ちを 1週間やることになっています。

かばん持ち実施期間中、私が”かばん持ち”さんに行っているのは、
1週間のスケジュールの内容とそれぞれの時間の使い方について
どのようなイメージを持っているかを、月曜日の朝一番に話すことくらいです。

そのヒトのバックグラウンドに近しい領域のテーマがあれば、
会議中や移動時に意見を求めることもありますが、
取り立てて”教える”という行為はしません。
従って、かばん持ちさんの80%の時間は「陪席」になります。

しかし、一緒にいることで、次から次へと異なる、重いテーマの相談や議論、
意思決定の場に遭遇することになります。
この体験は、将来を嘱望される若い世代の人たちにとっては、
どんな講義よりも貴重な体験です。
なにしろ全てのリアリティがそこに凝縮していますから。

私は、社内外関わらず、ほとんど全ての会議の節々で、
質問をし、 Wrap up(とりまとめ)をします。そのやり方を見てもらっています。
Wrap upのスキルとWrap upするタイミングの判断(つまり空気感ですね)を、
その目で見てもらっています。

加えて、会議の中で”不明点”があったり、”・・・さんに伝えるべき” という場合には、
その場ですぐアクションを起こすことが当たり前であることをわかってもらいます。

不明な点があった場合には、その場で時間を限って調べるようリクエストしますし、
“・・・さんに伝えるべき”という場合には、その場から、そのヒトの携帯に連絡したり、
メールを打ったりします。
このスピード感を”当たり前”のもの、として体に馴染ませてもらいたいのです。

なにしろ経営陣は忙しいのが当たり前です。
次から次へ異なるテーマに対面しますので、そのときに対処すべきことは
その場でやる必要があります。
さもないと、ずっと先になってしまいます。このスピード感でやらないと”回らない”、
ということは体験してみないとわかりません。

かばん持ちの効用は私にもあります。
常に”見られている”ことを意識しますので、手を抜けません。
もとより、ONの最中には手を抜かない方ですが、
疲れているときなど”まぁ、いいか・・・”となりがちですが、
それも”目”があるので、流すわけにはいきません。
“かばん持ち”も真剣ですが、こちらも真剣です。

これまで8名のかばん持ちがつきましたが、そのうち半分くらいの方が
“かばん持ち”期間を終えても、COO補佐の意識を継続してくれています。
行動も目に見えて変わったようです。
こういうヒトが出てくると、とても嬉しくなります。

相変わらず”柴田塾”という体裁で、毎月、座学もやっています。
これも有効な手段ですが、私の信念や行動様式から何らかの気づきを得てもらう、
という点では、この”かばん持ち”の方がより強烈であることがわかりました。

私は、人材育成に関して、”育てる”ことはできないが、
“育つ”ための環境づくりはできる、と考えています。
“かばん持ち”は、まさに”育つ” ための環境としては最も効果的かもしれない、
と思い始めました。

そこで、幹部候補生全員のかばん持ちが終わった後も、
社内から”1週間かばん持ち” を募ることにしました。
といっても、補佐的な仕事をしてもらうので、 “柴田塾卒業生”とか、
幹部の推薦者とか、ある程度のレベル感が担保されている中から
選抜(抽選?)することになりますが。

この”かばん持ち”経験者が増殖していくことが、経営と現場の意識や
期待感のGAPを最小化するだろうと思います。
どこの組織でもできることだと思います。
“かばん持ち”を受ける方は気を抜けなくなりますが、
組織の活性化を望むとあらば、ぜひ、お試しください。
最も古典的な人材育成策ですが、Still work! です。

おまけー1;
コンフィデンシャルな情報に触れるのを恐れる方もいると思います。
そういう方は、 TSUTAYAで「メン・イン・ブラック」を借りてみてください。
ソリューションがあります。

おまけー2:
気をつけないと、近くにいるヒトの”いいところ”だけでなく、
“悪いところ”も伝染しますね。日ごろからキャパが大きなヒトのそばにいないと
自分のキャパも狭くなってしまいます。

おまけー3:
その昔、劇団の集まりで花火大会をしたときに、
“好きな花火を買ってきていいですかー!”とH君が目をキラキラさせながら
言ってきたので「もちろん!」と答えました。

その夜、H君が山のように買ってきた花火を見たら、全部”へび花火“でした・・

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