Vol.293 大使館で学んだこと

寒くなったり、暑くなったり、なんだか落ち着きませんね。
まあ、私の場合、先週前半が岡山、後半が静岡というスケジュールでしたので、
余計そう感じたのかもしれません。

さて、「・・・で学んだこと」シリーズ。

今回は「在オランダ大使館で学んだこと」です。
(この後、休刊までの間に、組合で学んだこと、
コンサルティング会社で学んだこと、企業再生を通じて学んだこと・・・
などを続ける予定です。)

私は24歳から27歳まで、オランダのハーグ市にある
在オランダ日本国大使館で働いておりました。

当時、仕事の50%は国会議員の先生など要人が訪蘭された際のアテンド業務。
通称、便宜供与と言われる仕事です。残りの50%は会計・庶務業務でした。

この大使館勤務での様々な体験が組織・人事に関する問題意識を
高めるきっかけになりました。
現在の私の原体験はここにある、と言っても言い過ぎではないでしょう。

もちろん、問題意識ばかりではありません。
学んだこともたくさんあります。例えば「設宴」。
もしかすると外務省用語ですが、
自分がホストになってゲストをもてなすということです。

ホテルでは裏方としてサポートしてきましたが、
大使館ではホストとしての立ち振る舞いを学びました。
お招きする方の性格、好みを考えて、料理を選ぶこと、話題を用意すること・・・

これも誰かが”教えて”くれたわけではありません。
いろいろな人の「設宴」をお手伝いする中で
“ふーん、そうかー”と、”盗んだ”わけです。

独身の私の場合、他の大使館員の方々のように、奥様が料理をつくり、
ご主人がおもてなしをする、というわけにはいきません。
そこで、馴染みの中国料理の”重慶飯店”の親父の李さんに、
お願いして出張してもらうことが多かったです。

なんと言っても、ここのHot & Sour スープは絶品でした! 
その後も日本国内はもとより、香港、北京、上海、ロンドン、ニューヨークの
チャイナタウンなどで試してみましたが、この味に匹敵するものには、
いまだに遭遇しておりません。

「説宴」において料理は自分がよくわかっているものを用意する。これが基本。
内容から味から、自分の言葉でゲストに説明するのが大原則だからです。
私は毎度同じメニュー、Hot & Sour スープ、海老と卵のあんかけ(フーヨンハイ)、
魚料理、青野菜の油いため、それと麻婆豆腐と焼きそば。

まあ、今から考えると完全に若者ごはんですね。
しかし、私からすると、どれもオススメ。自信をもって、提供できていました。

そして、話題。
まずは、ホスト側でゲストにとって知識として持って帰れるものを用意すること。

初めてオランダを訪れる方であれば、オランダの”トリビア系”のお話。
ガイドブックに載っているような話ではなく、
住んでいるからこそ、知っている話をするのがポイント。
帰国してから、 “オランダに行って聞いたんだけどね・・・”
と他人に話したくなるネタがいいわけです。

例えば、

「オランダの水は硬水なので、シャワーとか水周りが石膏みたいな
白いものが出てつまりやすい。そんなときには、お酢を流して溶かすのが普通」

 「オランダだと誕生日には、誕生日の人がケーキを周囲に配る」

 「オランダのスーパーの肉売り場で超安い肉があった場合には要注意。 
犬用の肉が同じ売り場に並んでいることがある」

 「オランダの男子トイレ。平均的な日本人だとジャンプしないと用が足せない。 
なぜなら、オランダ人男子の平均身長は183cmもあるから」

「オランダの”飾り窓”の美人たちの10%は元男性」
(・・・だんだん、ここで書けない内容になってきたので、この辺でやめます。)

これだけだと長く持ちませんので、これをイントロとしたら、
主はゲストが得意になって話せる話題でいきます。
そうするためには、基本的な勉強をしておかねばなりません。
質問ができませんからね。そうなると、多岐にわたって勉強することになります。

元々、大使館員は情報を取り扱うのが仕事ですから、趣味嗜好に至るまで、
いろいろな情報収集をするのが得意な方が多く、
そのカバレッジの広さにはしばしば驚かされました。
時間があることも幸いして、美術館とかイベントにも直接足を運ぶ、
これが話題に深みを与えていました。

こういう姿勢も”盗ませて”いただいたことのひとつです。

たかだか2時間程度の夕食のために、これだけの準備をする。
この姿勢は大使館で「設宴」のサポートに数多く接し、
稚拙ながら自分でも主催してみたこと、これがなかったら、
知りえなかったかもしれませんね。

「設宴」後は、それこそ昔からの知人のように情報共有が進みます。
これは人間関係づくりという点からすると、素晴らしいですね。

おまけー1:
Hot & Sourスープの美味しいお店をご存知の方がいましたら、
ぜひ教えてください。
豆腐とザーサイが入って酸味と辛味の絶妙なバランス。
これが20年前に舌が記憶した味です。

おまけー2:
オランダでは成人の服ではサイズが合わず、 10歳用の服を着ていました・・・

おまけー3:
さすがにジャンプしての用足しは”衛生上問題”なので、
アジア系のお店では踏み台が置いてありました。

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