Vol.534 感情の門

「感情の門」というプログラムがあります。感情的になっている相手にわかってもらう

ことを実践演習するプログラムです。Indigo Blueオリジナルの体験型プログラムの一つです。

海外ツアー中に、とある顧客がカフェにカバンを置き忘れて紛失します。この顧客、

ツアーコンダクターに対処を依頼しますが、“置き引き”ではないので保険が適用されない

と説明を受けます。そうは言っても孫へのお土産や思い出が詰まったデジカメを一緒に

紛失したことから、どうにも納得できません。帰国後、保険会社にクレームをしに来社。

この顧客への対応を求められるプログラムです。

理想的なゴールは「このお客様が今回の紛失に保険が適用されないことを理解・納得し、

かつ、次回の海外旅行時もこの会社の保険に加入したいと思う」です。

プロの役者がカバンを紛失したお客様になり切って登場。受講生は保険会社のお客様

相談係のチームとして対応します。

なかなか難易度の高いプログラムです。3~4人のチームで対応してもらうのですが、

過去に成功したチームは数えるほどです。感情的になっているお客様(プロの役者)を

更に怒らせて終わるケースが多いです。

このプログラムの成否は最初の5秒で決まります。

会議室で待つお客様のところにどのように現れるか、この第一印象がその後のやりとりに

大きな影響を与えます。ポイントは“大事なお荷物をなくされて消沈しているお客様への

共感”を感じさせる現れ方ができるかどうかです。

普通に(事務的に)入室してきたり、いかにも消極的(できればお会いしたくない)

雰囲気を醸し出したりしていると、その時点でかなり心象的にマイナスです。

そこから面談でリカバリーするのはよりハードルが上がります。

面談でやりがちなのが「まずは、カバンをなくされたときの状況について教えて

ください」とこの顧客に説明を求めることです。しかし、これをやりますと、

お客様の心象は即座に悪化します。

「なんども説明してきたじゃないですか。聞いてないんですか!?」と。

これに対してやりがちなのが、

「いやいや、直接お伺いしたいのです。間違いがあるといけませんから。」

炎上路線まっしぐらです。

通常の心理状態であればまだしも、クレーム客にこの流れはいけません。

直接確認したいのは、自分たちが判断したいためで、その材料を基に

“保険が適用できない”ことを説明しようとしているな、と受け止められます。

完全に対立構造になります。

状況確認はもちろん必要です。しかし、意味が違います。ここでやるべき

状況確認は“お客様が大事なお荷物をなくされて消沈している、そのお気持ちを

理解するために状況確認をさせてください”なのです。

まずは“大事なお荷物をなくされて消沈しているお客様への共感”の言葉から

始めるのが筋です。旅行の思い出話をお伺いするのは入りやすいアプローチです。

その上で、“保険の適用ができなくて残念に思う”です。

このときに気をつけるべきは、言葉ではありません。雰囲気、声のトーン、

表情です。いかに良い言葉を連ねても、“大事なお荷物をなくされて消沈して

いるお客様のお気持ちを理解している”感が心から表現されていないと

何を言ってもダメです。

営業で厳しいお客様とのやりとりを経験してきた人たちはたたき上げ的にこれが

できます。特にベテラン社員がうまい。しかし、この手のやりとりは営業行為以外

の場面でもたくさん発生します。どんな仕事をしていく上でも必要なスキル

だと思います。

このプログラム、実は「論理の門」「論理と感情の門」という3つの門をクリア

してもらうつくりになっています。(Business 3 gatesといいます。)

「論理の門」は楽々クリア、「感情の門」がクリアできず、

その後の「論理と感情の門」でボロボロというエリート集団が多いですね。

おまけー1:映画「紙の月」。なかなか深いメッセージのある映画です。

後味は良くないですが、今年の邦画で柴田的には「一番」です。映画の後半に横

断歩道を渡るかどうか悩むシーンがあります。ドキッとするシーンです。

http://www.kaminotsuki.jp/

おまけー2:オフィスに等身大のアイアンマンのフィギュアを買いました。

うししーと記念写真を撮って悦に入っていたら、その日の夜に早くもいたずらされ、

アベンジャーズの仲間たちの写真が切り貼りされていました。

翌日の全体会議で厳重注意をしました。

“重大な誤りがある! 何だか言ってみなさい。”

Aさんがこそこそと「ハルクがアベンジャーズのハルクじゃないですね」

(違います。ロキが入っていたのが誤り)

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