Vol.548 それ、ずるいですか?

おはようございます。気になることがあります。

多くの日本人のメンタリティに潜む“ずるい”という感情。これは厄介です。

先を見通して行動すると、思いがけず周囲から“ずるい”と思われることがあります。

国語辞典によると、“ずるい”とは「自分の利益のために要領よく立ち振る舞うさま」と

あります。もう一歩踏み込んだ意義辞書によると「誠実でない手段で利益を享受しようと

するさま」とあります。

少し前のことですが、こんなことがありました。前日の天気予報によると翌朝には大

雨大嵐。夜のうちにタクシーを予約しました。次の日の朝、予報通り大雨。タクシーを

探す人が立ち並ぶ中、予約車にすいーっと乗り込む私を見つめる“あの人、ずりぃー”

という目、目、目・・・。

前日に情報取集し、(晴れるかもしれないという)リスクをとって予約料金を払い、

タクシーを得たわけです。ところが、それをしなかった人たちから“ずりぃー”と

思われる・・・。なんとも“座りの悪い”感じです。

ある企業でこんな話を聞きました。入社2年目の女子社員からです。ベテラン女子社員が

課長から調べものの指示をされ、あっちを探し、こっちを探すがなかなかまとまらない。

見かねた課長から指示されて、さっとネットで調べてレポートに仕上げたら、

“ずるい・・・”という目でジトッと責められたと。

これってなんでしょうかね。“ずるい”ですかね?

この若手女子社員が “ささっと”調べることができたのは、日ごろからネットを使った

情報収集をやっていたからです。しかし、時間をかけたが成果にたどり着いていない人

にしてみると、彼女の行動は“ずるい”と感じられたわけです。

前者を“スイスイ系”、後者を“汗かき系”と便宜上ネーミングします。どうも、

“汗かき系”が賞賛され、“スイスイ系”が疎んじられる傾向にあります。新しい

やり方でスイスイ物事が進むのを“汗かき系”は良しとしません。恩恵を得るために

自分は苦労してきた。他の人も同様に苦労するのが当たり前と思っています。

そんなことありませんよね。工夫して苦労せずに恩恵を得ることができた方がいいに

決まっています。しかし、これを人間関係ができていない人にやられると“ずるい”と

ネガティブに受け止めてしまう。

世の中一般に、何をするにしても変化についていけない人への過大ともいえる配慮が

あります。これも“ずるい”という反応とそこから展開するネガティブな反応を怖れて

のことでしょう。先週、米国から帰ってこられた方からこんな話を聞きました。

「柴田さん、日本の空港では携帯やスマホでチェックインする人がまだまだ少ない。

みんなEチケットを印刷してバーコードを読ませている。米国は違う。紙対応の

カウンターの数が激減している。携帯端末を持っていない人はその人が悪いとばかりに

長蛇の列に並ぶことを強いられている。すごいもんだ。日本でこれをやったら大問題になる。」

スマホ対応に切り替えると航空機の発着情報の通知、荷物の有無の事前通知など運航の

効率化が進みます。オペレーション上はそちらの方が間違いなくいいわけです。

これを進める際に、“スマホを持っていない人はどうするんだ?”として「移行措置」

(この場合、紙の対応ですが)これを厚くするのが日本流。一方で空港や航空会社の

オペレーションが効率化すると、価格やサービス面で最終的には顧客にその成果が

還元されるからとして、強引に切り替えてしまうのが米国流。

どちらも極端な感じがします。日本流でやるとコスト高になります。進化も遅くなります。

一方、米国流でやると、“ついていけない層”が浮き彫りになります。

“理と情のバランス”の話です。しかし、日本流はややウエットで情に偏っているように

思います。こうした意識が変わっていくにはポジティブな意識の伝染が必要です。

周囲に影響を及ぼす人たちには、人間関係の有無に関わらず、スイスイ系を称賛し、

新しいことに意欲的にチャレンジして欲しいですね。それが“ずるい”と思う前に

見習おうとする人たちを増やすきっかけになります。

おまけー1:新幹線の車内販売のお姉さんの動きが速すぎて買えないことってありませんか。

今日はこれで通り過ぎ3度目です。これはお姉さんとの勝負だ。

おまけー2:映画“イミテーションゲーム”/エニグマと天才数学者の秘密、おもしろかったです。

異才なるもの、大義を成すのは執念と残酷な選択。もう一回見たいくらい面白かったです。

http://imitationgame.gaga.ne.jp/

おまけー3:「優秀なプレイヤーはなぜ優秀なマネージャーになれないのか?」

早くも増刷がかかったそうです。購入いただいたみなさん、ありがとうございます!

書店であまり見かけなかったのは、“売れたからか”と妙に納得する私。(嬉し-)

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