Vol.590 なりきる

「演ずる」。優れた人たちがやっていることです。

演ずるというと、なんだか“作り事”のような印象がありますが、違います。

本気で演ずれば、それが真実になります。本気で演じていれば、そのうち“演技”が

本物になります。

リーダーになり立ての人は、自分が考える理想的な姿を本気で演じてみてください。

最初のうちは気疲れします。しかし、そこで頑張って演じ続けてみてください。

慣れてきます。そうなると、それは“演技”ではなく、自分の一部になります。

私はこれを「なりきり力」と呼んでいます。

自分の「素」だけでやれることには限界があります。自分の「素」のキャパシティを

超えることをやらなければならないときには、この「なりきり力」を使うのです。

逆に言うと、「なりきり力」を意識することで自分のキャパシティをどんどん拡大・

拡張させることができます。

まずは、なりきる「役」をよく理解します。それは、どのような環境下で、

どのような立ち振る舞いをすることが求められているのか。ここをよく理解します。

次にその姿をイメージします。できるだけ具体的なシーンをイメージします。

ここまでできましたら、後はそのイメージの「なりきり」を始めます。

ここでポイントとなるのは、最初にイメージできるだけの情報を得ておくということです。

全て想像力でやるということではありません。リアルな情報が必要です。

例えば重要なプレゼンテーションの場合、まずはプレゼンをしている自分を

イメージします。このためには、プレゼンする場所がどこなのか、そこが会議室なのか、

応接なのか、立って話せるのか、座ってか、パワーポイントを使えるのか、

配布資料でやるのか、誰が聞き手なのか、何名か・・・、これらのことをイメージ

できるだけの情報がないと始まりません。

必要な情報収集。これが「なりきる」ためのSTEP-1です。

実は多くの人がこのSTEP-1を軽んじています。頭の回転が速かったり、器用である人に

その傾向があります。“その場対応”でなんとかなってきているからです。しかし、

重要な役目になればなるほど、STEP-1をおろそかにしていると、“その場対応”

ではうまくいかなくなります。これに気づかず“若いときは優秀だった”人に

よくお目にかかります。STEP-1を癖づけするところからやり直しです。

次に「なりきっているつもり」と「なりきっている」は違います。「つもり」は

「つもり」だとばれます。周囲が「ああ、無理してるな」と思ったら負けです。

そうならないためには、「なりきる」ために必要なスキルを高めないといけません。

プレゼンであれば、「話し方」「構成力」「スライドのデザイン」「質疑応答

ハンドリング力」を高めておきませんとすぐに化けの皮がはがれます。「なりきる」

ために人知れず特訓する。これがSTEP-2です。

特訓をしなくても「なりきれる」状態になる。ここが「なりきり」のゴールです。

STEP-2の間はある意味で冷や冷やです。しかし、“ゴマカシ”はダメ。見る人が

見たらわかります。フィードバックを真摯に受け止めて、改善する。

この繰り返しを怠ってはいけません。

STEP-2からゴールまでの道のりは近そうで遠いです。ゴールに到達したと思っても

そうでないことが多い。周囲からのフィードバックを受け続けること。

これが「なりきり」のクオリティを高めます。

職場で「なりきり力」を発揮し、家庭でも「なりきり力」を発揮する。

どこでリラックスするんだ?と思うかもしれません。私もそうでした。

しかし、賢人から“そう思うこと自体まだまだだ”と諭されました。

そうなのです。「なりきり」が自分の一部になっていないから疲れるのです。

複数の姿に「なりきり」、かつ自然体。これが究極のゴールだと思います。

おまけー1:田坂広志さんが書かれた『人は、誰もが「多重人格」 - 誰も語らなかった

「才能開花の技法」』は大変興味深い内容です。なりきり力にもOT(体験型ケーススタディ

にもつながります。

おまけー2:申し込んだ覚えのないクレジットカードが届きました。

担当デスクに電話したところ、血圧が100くらい上がりました。 (-_-;)

「申し込んでいないカードが届くのは問題ですよね?」

「でも、お受け取りになったんですよね。」

「申し込みに使われたメールアドレスは私のではありません」

「では、警察にご連絡ください」

こういうデスクの責任者には一日も早くAIに代わってもらいたい。

おまけー3:ちなみに、私になりすましてカードを申し込んだ“犯人”は判明。

解決です。 (^_-)

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