ここのところ、ほぼ毎日AI(ChatGPT 5.0)を活用しています。そのおかげで、個人的な生産性がかなり向上しました。周囲を見ても、同じようなことを言っている人が多く、近い将来、AI活用は通常のことになるでしょう。
この変化は単にホワイトカラーのアシスタント業務がAIに置き換わる、という話に留まりません。「組織設計」や「人材育成」のあり方そのものが、根本から変わる可能性があります。今回のメルマガでは、私なりの視点で「組織設計」に焦点をあてて考えをまとめてみます。
まず、AIが通常になりますと、従来の「階層・職務固定型」の組織は、「フラット・職務柔軟型」に変わる可能性が高いと考えています。具体的には、次のような形になるのではないでしょうか。
- 階層は2階層程度に
- 所属部署を固定せず、複数の職務を横断的に担う“社内スラッシュワーカー”が増える
〈階層の変化について〉
そもそも、組織設計上「階層」を設ける最大の理由は、マネジメントスパン(一人のマネージャーが管理できる部下の人数)にあります。部下の行動を管理し、統制するには、多くても10名未満(認知科学的には7名まで)が限界といわれています。人数が多くなると、結果として階層が増えます。また、地理的に離れた拠点がある場合、チームを分ける必要があるため、やはり階層が増える傾向にあります。
階層が多いとコミュニケーション上の問題が起きやすい上に、組織の動きが遅くなります。組織運営上、階層は少ない方が良いに決まっています。
AIの活用によって、状況は大きく変わります。リアルタイムでタスク進捗やKPIを把握でき、問題が起きそうな場合には早期警告も可能になります。さらに、上司の役割は管理・指導中心から、コーチ的なサポートへと傾斜していくでしょう。部下が質問したいことも、上司ではなくAIに聞くことが増えます。こうした変化により、従来よりも多くの部下を効率的にサポートできるため、階層を減らすことが可能になります。
〈社内スラッシュワーカーの増加〉
次に、社内スラッシュワーカーについてです。スラッシュワーカーとは、1つの職業にとどまらず、複数の職務・仕事を「/(スラッシュ)」でつなぐ形で担当する働き方をする人のことを指します。
現在でも、“超優秀”な社員は部署横断のプロジェクトや他部署のサポートを行い、所属部署を超えて全体最適に貢献しています。AI活用が進むことで、単純・定型業務はAIが代替し、データ分析、文章作成、レポート作成などもAIが補助するようになります。これにより、“超優秀”な人でなくても、時間効率が上がることで、「本業+α」の働き方が現実的に可能になります。これにより、人的生産性は確実に高まります。
社員が一つの部署に固定化していると、組織の“縦割り”問題が生じます。社内スラッシュワーカーが増えれば増えるほど、それは解消されていくはずです。社内スラッシュワーカーは特定部署のためではなく、全体のために働く存在だからです。
階層が減り、社内スラッシュワーカーが増えてくると、従来の人事制度では対応できなくなってきます。従来の固定概念を壊す人事制度の文化大革命が近づいてきていると思います。(そのうちAI時代の「人材育成」についても書きます。)
おまけ:AIが通常になったときこそ、心に火を灯す機会の価値が高まります。
音楽座ミュージカル秋公演「リトルプリンス」、お薦めです。
https://ongakuza-musical.com/2025/stage
記事はメルマガ「人事の目」で配信されています。