結果ももちろんですが、これはそれ以前の問題です。
明らかに、当事者がベストを尽くしていない場合。その改善を強く求めるのは当然です。
経営者にしてみると、一番腹が立つのはそういう状況に直面したときかもしれません。
しかし、頭ごなしに怒ったところで何も改善しません。
当事者にベストを尽くせない何らかの”事情”があるのかもしれません。
そこへの配慮も1~2回は必要です。
このアプローチは性善説的です。(^^)
“元来、当事者にはヤル気があるが、環境的な要因がそれを妨げている”、
これが前提になっています。
こういう配慮をしたにも関わらず、依然として”ベストを尽くしていない”ように見える場合には、
その当事者に実力が無い、と判断した方がいいでしょう。
それが単に”ヤル気がない”だけとしても、それも実力のうち。
そうなるとキャスティングのミスです。
多くの関係者の時間と労力を無駄にする前にキャスティングを変えましょう。
そうは言っても社内に適当なヒトがいないから・・・、という愚痴を良く聞きます。
まあ、そうでしょう。しかし、明らかにデキないヒトを配置し続けるのは罪です。
これはミスキャストだと思ったら、すぐに後任探しをしましょう。
まずは本当に社内に適当なヒトがいないかどうか。ここからです。
すぐに社外から採用しようとしてはいけません。可能性ある人材が経営者のアンテナに
ひっかかっていないだけの場合が多いものです。
仕事をするために必要な要素に「社内の組織力学を知り、使えること」があります。
これは外部から来たヒトではすぐにはできません。Plan-Aはあくまでも社内から探す。
こういうときだからこそ「抜擢」もありです。但し、「抜擢」で注意すべきは
「抜擢したヒトへのサポート」と「抜かれたヒトへの配慮」です。
「抜擢しっぱなし」はダメです。抜擢した側にはその人がうまく仕事ができるように
サポートする義務があります。最低でも3カ月は主要なミーティングには一緒に出て、
黙って横にいましょう。心配だからといって、マイクを取り上げてしゃべってはいけません。
あくまでも、黙った横にいるだけ。このヒトをサポートしている、
という存在感を示すだけでいいのです。それ以上はむしろ不要です。
マイクを取り上げてしまうと、周囲は「傀儡人事」とみます。
これでは、抜擢した逸材を”殺す”ことになります。
加えて、定期的に「抜擢した人材」の個別の”悩み相談”の時間をとります。
これをきちんとやっていけばたいていの場合、うまく進みます。そんなに時間を割けない
と思われるかもしれませんが、これは将来のために必要な時間の投資です。
デキないヒトのフォローで結果的に時間を割くことよりもずっと生産的です。
そこまでやってもダメ、つまり「抜擢が失敗」ということもあります。
しかし、この評価・判断をするために1年は様子をみましょう。私の経験からして、
1年様子を見てダメな場合、その後も期待されるほどは伸びません。
1年様子を見て「抜擢人材を外す」としても、これは社内的にも当事者的にも納得できます。
それよりも早く更迭したり、長くやらせたりすると負の影響の方が大きくなります。
「抜かされたヒト」をどう遇するか。大事なことは「そのヒトの尊厳を守る」ことです。
そのヒトがいいとか悪いとかでなく、未来のベストパフォーマンスを出すために変える、
という姿勢で臨みましょう。同時にそのヒトの過去の貢献を讃えることを忘れてはいけません。
こういう場合に、トップとして社内にメッセージを発信することが「抜擢されたヒト」
「抜かされたヒト」双方にとって”助け”になります。メールで構いません。
「抜かされたヒト」の過去の貢献への感謝、「抜擢したヒト」への応援、
このシンプルなメッセージがあるだけで、関係者がみな動きやすくなります。
Plan-Bとして社外から後任を迎える場合でも「抜擢した人材」と同じ接し方をします。
そうでないとせっかくの”高い買い物”が無駄になります。
これが仕事を振り分ける側の”ベストを尽くす”です。
それなしに自社の人材を非難してはいけません。
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おまけ:「なぜ、ベストを尽くさないのか」(上田次郎 著)は趣旨が違いますのでご注意を。
(個人的には好きですが)