全国で小・中・高等学校の校長、副校長、教頭先生を対象とした講演をお引き受けして
います。やり始めて10年になります。この4月以降、石川県、大分県、兵庫県、つくばの
中央研修所等・・・出かけてきました。もちろん、全て仕事の合間に出かけていくので
制限がありますが・・・
きっかけは1999年にとある県で発生した不幸な事件でした。関係方面からの依頼で、
この県の高校の実態調査に入りました。学校を客観的に見たのはこの時が初めてなのですが、
驚きました。事件の背景となる複雑な事象もそうですが、教職員のみなさんのあまりの
長時間労働に驚きました。年間労働時間に換算すると平均3000時間でした。世の中一般の
過労死ラインとほぼ同じです。いかにひどいか想像いただけると思います。
教務、校務、クラブ活動、問題児童(家庭)対応をしているとあっという間に3000時間。
ひどい人になると、365日ほぼ休みなく毎日、朝8時から夜の20時まで。4000時間を超えていました。
昔からのやり方はそのまま。加えて、文科省や教育委員会からの新しい指示が次々に来る。
保護者からの要請事項も増え、かつ社会的には体罰、いじめ問題がクローズアップ。一方で
学校内のIT化は遅れ、長たる校長先生に人事権、予算権なし。教員は高年齢の教員と若い
教員の2極化。ミドル層の絶対的な不足・・・
学校は大事な場所です。人づくりより価値ある仕事はありません。それを担うのが小学校であり、
中学校であり、高等学校です。その人づくりの現場がひどいことになっています。私は組織の状況を
「集団皿回し」と例えることがありますが、人づくりの現場は極度の「集団皿回し」。
ここをなんとかしたい。自分の講演がお役にたてるなら・・・と声がかかる限り、
お引き受け続けています。
教育再生会議や英語の4技能重視など人づくりの施策が国策として展開されつつあります。
これらは主として子供たちに何を教えるか(どのような子供を育てるか)がハイライトされて
います。これはこれで必要。私も賛成です。教える内容については、私自身提言したいことも
いろいろあります。しかし、それ以上に私は前述の実態に鑑み「教育の現場力強化と支援」に
スポットライトを当てるべきだと思うのです。
何かあると、世の中的には教員へのダメ出し風潮があります。そうされても仕方ないケースも
もちろんあると思います。が、個別のケースをあれこれ言うのではなく、根本的に現場力の
強化と支援を図るべきだと思うのです。
現場力の強化のために校長の責任と権限の拡大とマネジメント力強化は欠かせません。
精神論やスキルトレーニングだけでは限界があります。
同時に教職員の質的向上、問題解決力の向上も必要です。ここは座学の研修だけでは無理です。
一定期間、教育の現場を離れて、なんらかの実務に就く経験があった方が絶対に良いと思います。
更に教育の現場だけでなく運営面でもIT装備を早急に進めるべきです。
あともう一つ。支援策で忘れてはならないのは「保護者対策」です。
講演先で先生たちの「悩み事」を聞きますと。「保護者対応」が上位にきます。首都圏では
断トツ1位が「保護者対応」です。何かあるとすぐに保護者が学校にクレーム。教頭、校長が
対応に追われる・・・。ここをなんとかしたいものです。
保護者からすると、腑に落ちないことについては直接学校側と対話したい。担任に不満がある
場合には“上を出せ”となるのは当然です。学校は多くの生徒を対象に考えざるを得ませんが、
個々の親は自分の子供だけを考えます。このギャップがある以上、いわゆる“モンスター
ペアレント”問題はなくなりません。
そこで“緩衝材”となるべく、保護者の苦情対応窓口をおきましょう。学校評議委員会を
活用するもよし。ここは行政に音頭をとってもらいたいですね。ここに民間で管理職経験のある
経験豊富なシニアは配置して、仲裁や根本的な解決策を検討してもらってはどうでしょうか
これらの現場を強化し、かつ支援する仕組みづくり。それらが今求められていると思うのです。
私の講演は現場で苦しむ先生方に“あ、そういう見方、考え方があるのか・・・”と気づいて
いただいたり、元気になってもらうことしかできません。その場の癒しみたいなものなので、
残念ながら根本的な対処にはなりません。国や地方の予算配分をお願いしたいものです。
おまけー1:木曜日の午前中に横須賀の教育研究所で講演しました。翌日、参加された
校長先生から“元気をいただきました!”とメールをいただきました。嬉しいですね。
おまけー2:横須賀からの帰りの移動中に思わず笑ってしまった記事です。
「やせ我慢の反対語は?」「・・・でぶ大暴走」
「ハイジャックの反対語は?」「・・・いいえ、トムです」
おまけー3:隙間の時間で音楽座ミュージカルの稽古場に陣中見舞い。
「メトロに乗って(浅田次郎原作)」いいです。 ぜひ、足を運んでみてください!