びっくりしました。某研修施設でのことです。
「おはようございます!」「申し訳ございません!」「失礼します!」
大声が聞こえます。リクルートスーツ姿の若者たちが、何度も何度も唱和させられて
いました。どうやら新人研修です。ホワイエの片隅では泣いている女性もいました。
(TVCMをしている会計ソフトを販売している会社さんでした。)
なんと前時代的。これ何の意味があるんでしょうかね。
彼らが手にしている紙には「営業研修」とあります。若者たちの“気持ち”が前に出ない、
それをなんとかするための研修ということなら、その意図はわかります。
しかし、やり方がいかにも古い。誰であろうと同じスタイルを埋め込む。教え方は
、考えるな!指示通り売れ!です。
彼ら彼女らの大半が数年で辞めるでしょう。研修中にも辞めるでしょう。
ただ、そのやり方を是と信じる、それしか知らない人が出来上がっていきます。
“考えるな、売れ!”でお客側の事情お構いなしに売り込みにきます。電話攻勢、
アポなし営業、商品送り付け。顧客の立場からすると迷惑この上ありません。
買うとしても、無理やり買わされるか、営業マンが可哀そうで買うか、このどっちかです。
なぜ、こうしたやり方が未だに続いているのか。ここに問題の本質があります。
“自分で考えて”動くことができない、またはそれを望まない人がたくさんいるの
かもしれません。自分で何かをやろうという意思や意識は弱く、むしろ、言われたことを
やっていくことを望んでいるのかもしれません。向上心も弱く、創造的なことや挑戦は
したくないのです。いわば、“自ら生きていく力”が強くないのです。
彼ら彼女らには“優良企業”からは内定がでません。結果として、”優良ではない会社“に
そういう人材が多く集まることになります。”優良でない会社“の商品には競争力が
ありません。そうなると、売上を上げるにはゴリ押しか情に訴える営業しかないと
いうことになります。それが”考えるな、売れ!“にはまるのです。
一方で、その会社では、”自分で考えて動くことができない“彼ら彼女が働けるように
特訓しているのである。そう解釈すると、この大声唱和からの無理やり販売の
営業マンづくりも是となってしまいます。むしろ、“自ら生きていく力”が
弱い人たちを救っているとも言えるかもしれません。
問題の根幹は、こうした“生きていく力”が弱い若者が生まれてくる構造ではないでしょうか。
文部科学省では新しい学習指導要領として「生きる力」を正面から掲げています。
方針として大正解だと思います。問題は、その実行体制たる学校、教職員たちが
どう変われるか、です。更には親たちがどう変われるか。親からすると、
自分が体験してきたことと違うことを学校でやることになります。
親がこの新しいやり方を理解しないと子供が混乱します。ただ、これは未来のために
とても重要です。国民全員の課題として取り組みたいですね。
一方で、この新しい学習指導要領が効果を発生させる前に世の中に出てくる
“自ら生きる力が弱い人たち”をどうするか。“魔法の杖”はありません。
おまけー1:某研修施設の同じフロアで、どうみても「アルゴリズム体操」を
している中年の男女あり。この時期の研修施設は面白い。
おまけー2:気合系営業と言えば、最近日本交通の車内で良く目にするCMの
「営業は足が命」(面白いです。)
https://www.youtube.com/watch?v=7kBgt75H3w0
おまけー3:SIXPADが始めたジムの体験に参加してみることにしました。
(なんでも挑戦シリーズ)
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