991号「”気を揉む”をコントロールする」(メールマガジン「人事の目」)

「社長」を長くやって身に着けた心技があります。それは「“気を揉む”をコントロールする」ということです。

「誰かにお願いしていることがうまくいくかどうか、気を揉む。」
「相手がどう思っているか、気を揉む。」
「これからやることがうまくいくかどうか、気を揉む。

当事者意識が強く、責任を感じているが直接関われるわけでない、となると、当然ながら気を揉む機会が増えます。ただ、自分の感情のままに気を揉んでいると心がもたないことに気づきました。

組織のトップの周辺は”気を揉む“ことだらけです。しかも”気を揉む“ことはそう簡単には解消されません。時間の経過と共にそれが膨らみ心の重荷が増殖します。そうなると余裕がなくなり、ちょっとしたことで苛立ったり、思考そのものが浅くなったり、気分が落ち込みます。次第に前向きな発想がなくなり、どんどん悪いことばかり考えるようになります。名実ともに思い悩むトップになります。

あるとき、「柴田さんはいつでも眉間に縦ジワがある」と言われました。鏡の中の自分の顔を見ると縦ジワがくっきり。これではいかん。こんなことでは周囲に良くない気配をまき散らしている、と思いました。(今でもそのときの影響で眉間に縦ジワの跡があります。)

まずは「意識のかべー」と唱えて、気を揉んでいることを壁の向こう側にしまうイメージを持つようにしました。最初のころは、ちょっとしたことで壁の向こうから気を揉む材料が出てきてしまい、その都度、かなりの精神的なパワーを使って壁の向こう側に押し返していました。その後、“ココロに静かな水面を”(明鏡止水のごとし)という言葉に出会い、それをパソコンのディスプレイに表示させたり、その言葉を口に出してみたりして、気を揉まないように心がけていました。

それでもなかなかうまく自分の心をコントロールできず、うー、という日々だったのですが、しばらくして“悟り”ました。気を揉むことそのものをしないようにしても無理がある。むしろ集中的に気を揉み、それ以外のときは忘れる(心の奥底にしまう)ようにしようと思いました。

気を揉む案件の打合せをしているときは全力で気を揉みますが、そのうち合わせが終わったら、別のことに意識を集中させることにしました。別なことに集中していると気を揉んでいることを忘れます。そのうち、ずっと気を揉んでいると自分の生産性に影響があり、時間を無駄にしていると考えられるようになりました。

気を揉んでしまうのは「悲観的なシナリオ(こうなったらどうしよう)」が頭を横切るからです。集中的に気を揉むときには「楽観的なシナリオ(こうなったら最高だ)」についても敢えて考えてみます。この2つを同時に考えることで悲観的なシナリオのネガティブパワーが弱まり、別のテーマに移行したときに忘れる(心の奥底にしまう)ことができます。

この心技はある意味で人間的ではありません。家庭内や友人との間では使わない方が良いです。ただ、リーダーという役割にある人には必要な心技だと思います。

水原通訳をめぐる多くの報道の中で、活躍し続けている大谷翔平選手を見て、この人はこの心技を身に着けていると思いました。


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