Vol.690 自由の範囲

“わが社は自由な風土・・・伸び伸びと仕事をしてほしい”と入社式で話す社長の

ニュース映像を見ました。4月におなじみの入社式風景の一コマです。しかし、

ほんとにほんとに“自由”なのでしょうか。正確に言うとこの自由は“ある範囲の中での

自由”ですよね。そこには暗黙的に共有された“範囲”があるはずです。

“無礼講”と言われて、本当に無礼講な振る舞いをすると、後々ややこしいことになる

ことはご存知の通りです。“ある範囲”の中での無礼講が求められているわけです。

宴席の冒頭に“今日は無礼講だ!”と言われたからといって、かつら疑惑の常務の

髪の毛を引っ張ったり、赤ワインの汚れは白ワインで消せるとして財務責任者に

白ワインをかけたりしてはいけないのです。真空とび膝げりを見せてやる、とか

やってはいけないのです。(若いころのSくんへの戒めです。)

ここで言う“範囲”。これは暗黙の常識感によるものです。が、多様化を推進すれば

するほど、この常識感が違う人がたくさん入ってくるようになります。かつては

“若いころのSくん”みたいな人は超マイノリティでした。裏に呼び出して

「お前、何考えてる!」系の指導でなんとかなっていました。つまり、個別撃破で

対応できたわけです。これからそれでは対応しきれなくなるでしょう。

この対策を制度的にやろうとすると大変です。ネガティブリストを延々と作ることに

なります。ネガティブリストとは、原則自由だがこれはダメ、という「ダメ」を

列挙するものです。ネガティブリストに挙げられていないものであればなんでも

OKというものです。

例えば、“明日の会食。服装は自由だけど、お客様はお硬い系の会社だから、

Tシャツ、ジーンズはダメだよ” この場合、ネガティブリストに挙げられているのは

「Tシャツ」と「ジーンズ」。それ以外はOKということです。なので「柔道着」で

現れたとしてもリストに載っていないので文句は言えない。それがネガティブリスト方式です。

そういう想定外のことが起きないように、つまり、自分が思ったように統制しようと

するなら、ポジティブリスト方式にするしかありません。これは原則ダメだが挙げたものは

OKというものです。“明日の会食。服装はスーツ、白のワイシャツでネクタイ、

黒の靴下で来るように。それ以外はダメ”とやるのです。しかし、これではたいへん窮屈です。

じゃあ、やはりネガティブリスト方式か、となったとしても、ありとあらゆる可能性を

考えてリストを作る労力がバカになりません。米系の企業との買収案件では

このネガティブリスト方式になることが一般的なので、どえらく分厚い契約書になり、

弁護士へのフィーがかさむことになります。それを日常的にやることを考えると悪夢です。

この方式はおススメできません。

ではどうするか。自分の意識の中にある”範囲“を広げるしかありません。自分の感覚

では変なことをする人が現れても笑える度量を持つこと。笑っている自分に当惑する

相手がいたら、それがいかにおかしなことであるかを説明すること。それで相手が

その行動を変えれば良し。仮に変えなくても、そういうことだと受け入れる。

これしかないと思います。

現実的にその人の行動により、迷惑や経済的な損失を被るようなことがあるのなら、

それはきちんと説明しなければなりません。ただし、その人への尊重を忘れずに。

ここまで書いて、かつて名古屋で冷やし中華に問答無用でマヨネーズをかけられて

文句を言ったことを思い出しました。すべては自分の度量次第ですね。

おまけー1:京王プラザホテル労働組合時代の仲間が六本木で「ひがん」という

和食のお店をやっていることを知り、出かけてみました。さすがの腕。イカの塩辛は絶品!

おススメの日本酒も美味しい。小さなお店ですが、ぜひ足を運んでみてください。

予約の際、柴田励司から紹介されたと言えば通じると思います。

http://nihonsyu-higan.com/

おまけー2:大谷翔平選手の活躍に胸躍ります。勇気づけられます。

おまけー3:おなかが鳴るのを止める方法があったら知りたいです。鳴りそうになったら

咳込むという手は効くときと効かないときがあります。たいてい予知できないので

咳が間に合いません。政治家とか芸能人とかはどうしてるんだろう。

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