マルチタスクと隙間時間(「人事の目」857号)

隙間時間の活用がマルチタスクのコツ

“5分もある”

その昔、ある方から教わった言葉です。当時、大量に届くメールの処理に悩まされていました。日中のスケジュールを終えると受信トレイに未読のメールの山。気が滅入る日々でした。同じくらいのメールの量を、“ふつうに処理してるよ。”と涼しい顔でおっしゃっていた方に、“どうやっているんですか?”と尋ねてみました。

“5分もある。5分あれば数本メールの処理ができる。隙間の時間をいかに使うかだよ。”

打ち合わせと打ち合わせの間。トイレ、移動の合間。日常の中に隙間時間は結構あります。油断しているとあっという間に過ぎてしまいます。隙間時間にやれることをやる。このやり方でないと同時にいろいろなことを処理するのは無理です。

社会人1年目。ホテルの宴会場でウエイターとして働いていたときのことです。宴会場の隣に仮設されたパントリースペースに戻ってくるときによく怒られました。(尻キックでした。)

“持っていく!下げモノをする、これはセットだ。手ぶらで帰ってくるな!”

無駄のない行動をすること。これはホテルの現場で叩きこまれました。

家事は“無駄のない行動”をするための絶好のトレーニングの場です。洗濯機をまわしながら、風呂掃除をする。ルンバを掛けながら、片付けものをする。食器洗浄機を稼働させながら、ゴミ出しをする、洗濯物をたたむ。これらの組み合わせをする…等々。生産性が高い仕事ぶりの人は、おそらく家事をしっかりこなしている人だろうと思います。

“ながら作業”をいかに効果的に行うか。このことに日々チャレンジしていると、処理時間が短くなっていきます。そうなると新たな時間が生まれ、別の新しいことをやれます。マルチタスク化への良いサイクルが回り始めます。

マルチタスクと集中レベル

マルチタスク 隙間時間“ながら”作業を進める上で注意点があります。「集中スイッチ」を忘れないことです。集中レベルを0から5(0は全く集中していない、5は最大の集中)としますと、“ながら作業”のときは集中レベル3のままで複数のタスクを行い、必要なときに同時にやっているどれかの集中レベルを5にする、そんなイメージです。集中を意識しないで“ながら作業”をすると、ミスやエラーが勃発します。

上の人は無意識のうちに周囲の人の生産性を低下させることがあります。コミュニケーションの際に“集中”を欠いているのです。(誰からも注意されないから“弛んで”いるのです。)

こんなことはありませんか。

  • 部下が1回で済むことを何度もやりとりすることになる(メールの書き方が悪い)
  • 意思決定会議の後に、どうしたらよいかわからない人が発生する(決めない、はっきりしない態度をとる)
  • 意見を求められたときに適当に答え、後で異なることを言う(聞かれたときにスイッチが入っていない)

この最後の事例は私にもよくあります。反省。まだまだです。

組織の中で上になればなるほど、マルチタスクが求められます。「隙間時間の活用」「集中スイッチONでの“ながら作業」、「誰も注意しないからと言って弛まないこと」。リーダーにとって必須のスキルと心のもちようです。

さて、集中レベルを維持するからこそ、集中をOFFにする瞬間も意識的につくりましょう。さもないと持ちません。

おまけ

おまけー1:時間に追われるから時代が求めるのは「オールインワン」型の化粧品。化粧品会社の経営をしていたときにこういう議論をしたことを思い出しました。違いますね。お化粧を落とすときは、ホッとする時間(スイッチをOFFにする)であった方がいいに決まっています。だから、ドモホルンリンクルのアプローチは良い癒しとなると思います。(私はお化粧をしていませんが、長年ドモホルンリンクルを愛用しています。)

おまけー2:近所のスーパーのレジ係の名札を見たら「ほけつ」と書いてありました。その人のこれまでの人生を垣間見る気がしました。

 

執筆

Indigo Blue 代表取締役会長
柴田 励司(Reiji Shibata)
上智大学卒業後、京王プラザホテル入社。在籍中に、在オランダ大使館出向。その後、組織・人材コンサルティングを専門とするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年には、38歳で日本法人代表取締役社長に就任する。以降、キャドセンター代表取締役社長、デジタルスケープ(現イマジカデジタルスケープ)取締役会長、デジタルハリウッド代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より株式会社Indigo Blueを本格稼働。

 

 

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