無理を言ってはいけません。誰かに仕事をお願いするときに、その人が体験したことが
ないし、見たことも聞いたこともないことをやれ、と言ってませんかね。
そりゃ、無理です。「青沼静馬」を知らないIndigoblueのMTNさんに“青沼静馬の物まね”を
やってくれ、と言うようなものです。
部下が期待するようなアウトプットをつくれないと嘆く前に、その部下に自分が望む
アウトプットを見せているか? 更には、そのアウトプットを創る過程を見せているか?
自分が作業したり、悩んでいる姿を見せているか? これを自分に問いましょう。
こうしたことを一切していないのに、期待するアウトプットが出てきていたとしたら、
それは大変ラッキーです。その部下が極めて優秀であるか、あなたの要求水準が低いか。
このどちらかです。しかし、いずれにせよ、その部下が優秀であれば、早晩いなくなるでしょう。
それではその部下にとって学びがありませんので。
この3月末に二人の「柴田励司のカバン持ち」出向者が帰任します。いずれも日本を代表する
大企業からの出向者です。帰任にあたり、出向元の2社でそれぞれに出向報告会を
開催してくれました。彼らがこの1年何を学んだか。その総括の場でした。
保護者のような面持ちで参加しましたが、この1年でずいぶん成長したことを実感しました。
彼らが従事した実務は大企業ではまず体験できないような修羅場の連続。日常的にも
何でも自分でやらないといけないという環境で、これらの経験がビジネスマンとしての
対応力を大幅にアップさせました。更に、これに加えて毎月一定時間、私のそばで
私の一挙手一投足を見てもらいました。ここが彼らの“気配”を変えました。
見てもらったのは、私のいい面も悪い面も全部です。もちろん“楽屋裏”もです。
限られた時間ではありましたが、その時間を通じて、彼らは私が意識して表現している佇まい
、空気のつかみ方、場のつくり方を吸収してくれました。こればかりはなかなか教えられません。
いずれも私が“社長”業を20年以上やって身に着けたことだからです。スキルとは違います。
経験値です。これは自分の目で見て、体感しないと難しいと思います。
彼らはこの点を彼らなりの解釈で吸収してくれました。引受人としては嬉しい限りです。
「どんな仕事を誰としたか」これが成長に大いに影響を与えます。4月に優秀な若者が
入ってくるとしたら、改めて留意しましょう、「誰と仕事をさせるか」。このアレンジは超重要です。
自助努力でやれることはやりましょう。何といっても「やったことがないことへの
チャレンジ」に尽きます。
なんでもそうですが、経験してみないと自分の引き出しが増えません。いろいろなところに
出かけ、いろいろなものを食べ、いろいろな人に会い、いろいろな芸術作品に触れる・・・。
こうしたことの積み重ねです。何よりも大事なのはそうした経験を楽しむこと。
やらなければならないからやっている・・・では、その経験は「引き出し」にはなりません。
自分が楽しめるような事柄でいいのです。やったことがないことを体験する。そこからです。
おまけー1:「青沼静馬」を知らない方へ。“犬神家の一族”(できれは古いやつ)をご覧ください。
おまけー2:なんでも経験だ!とレストランで食べたことがないものを選びがちです。
が、その多くが失敗です。それでも懲りずに新しい“変なメニュー”を選んでしまいます
。多くのケースでネーミングにやられています。“ここでしか食べられない、
トマトとチーズのハーモニーお好み焼き”とかあるとまず頼んでしまいます。(失敗でした)
おまけー3:「もしかしてブラック上司?」出版記念トークを4月9日の夜、アカデミーヒルズ
(六本木ヒルズ森タワー49階)でやります。なんと、書店に並ぶ前のトークです!
アカデミーヒルズさんのご好意により、「人事の目」読者に30席ご招待いただけることになりました。
ご希望の方は以下のURLからお申込みください。締め切りは3月31日。
応募者多数の場合には抽選とさせてください。よろしくお願いします。