997号「何に対して報酬を支払うか、その経緯と未来」(メールマガジン「人事の目」)

「人事の目」や「日経産業新聞(休刊してしまいましたが)のSmart times」で何度か発言してきた「プロフェッショナル型人事制度」に興味を持っていただく方が増えてきました。現在、複数の企業、団体で導入コンサル中です。

そもそも、人事制度の根幹は「何に対して報酬を支払うか?」です。35年ほど前は部長、課長という職位に加え部部長、課長級を認める職能が主流でした。それが25年ほど前に大企業を中心に職位よりも幅広な概念となる役割(ポジション)へ移行し始め、数年前からは職務(ジョブ)と言われるようになっています。

この変遷には背景があります。35年前に職能なる概念が採用されたのはポストが足りなくなったからです。ポストにつけない人達のモチベーション維持を目的に部長と同等のという名の“部部長”、“部長級”、“部長待遇”なるものを設定し、制度上説明できるようにしました。それが「職能」という概念です。ところが、これにより指切揮命令系統が混乱し、かつはっきりとした役割責任がない高給取りを多く生んだという批判もありました。

その後、ライン管理職でない管理職クラスの人たちを専門職と名づける事例が増えましたが、私が思うに、これは“詭弁”で、自分の専門性について「?」という専門部長も少なくなかったように思います。

経済が低迷期になると、かつてモチベーションを維持しようとした層に固定費削減の逆風が吹きます。報酬額がパフォーマンスに見合っていない、払い過ぎではないかと言われるようになります。そこで、社内における役割責任を明確にして、その責任の重さ、貢献度などを職務評価し、その結果に基づき報酬額を決めようという流れになりました。実際にはこのタイミングで報酬減となった中高年が多く、年俸制ならぬ減俸制と揶揄されていましたね。

最近、特定の職務(ジョブ)を報酬の柱にしようという動きが出ています。特定の職務が事業の成長に明らかに大きなインパクトを与えること、その職務を担える人材が社内で育っていないことなどの理由からキャリア採用で獲得しようという動きが活発になりました。そうなると、その職務を担える人の相場が高騰します。その報酬を支払おうとしても、社内の基準では収まりきらず、その人は特別待遇となります。こうした方を高度専門職と称して、他の社員と一線を画した処遇をしている企業もあります。

高度専門職は特定個人処遇策です。この先にあるのは社員全員が自分の専門領域を認識し、その道のプロを目指す制度ではないかと、私は考えています。2年ほど前から「プロフェッショナル型」を提唱しているのはそのためです。

これまでは、問題解決力の高さと対人コミュニケーション力の強さを評価して処遇していれば間違いなかったと思うのですが、現在のように動きが早い環境下では、課題発見型でないと潮流を見誤ります。課題は常に具体的です。そうなると、その道のプロでないと(専門性がないと)課題が見えません。

自社の事業のバリューチェーンを描き、その中でそのバリュー創出や増大に影響を及ぼす職務のことをキージョブと言います。このキージョブについて、どのような評定要素があるのかを整理し、可視化する。プロフェッショナル型検討の第一歩です。所用時間はおよそ3時間です。

人事制度の根幹である「何に対して報酬を支払うか」が度重なるマイナーチェンジでわからなくなってしまっている企業も少なくないと思います。そろそろフルモデルチェンジですね。


おまけ―1:先週、私の偽のFacebookアカウントが多くの方に友達申請するという時間が発生しました。よく出来ていたアカウントなのですが、所属が“IndigoBlueるいるい”となっており、愉快犯にやられたのかなーと思っています。それが出回る前日に「私の世界一のお金持ちパパ」という中国のショートドラマが気になって、それを観れるサイトに登録したせいかも・・・(怖くて登録したのに続きが見れない)

おまけー2:このおまけで「ブルーロック」は勉強になる、と書いたところ、ネットフリックスに加入したという人に多く会いました。そのうち、ネットフリックスから表彰されるだろうと思っています。

おまけー3:自宅近くの「マルエツプチ」が閉店に。すげー困る。



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