1019号「稼げない給与制度」(メールマガジン「人事の目」)

「頑張っても給与上がんねー。」

某スーパー銭湯で若者たちが話している声が耳に入ってきました。そうなのです。残念ながら、普通の給与制度だとサラリーマンの給与の昇給は年1回。しかも数%。たいして上がらないのです。かつては”残業をして稼ぐ“が通用しましたが、働き方改革により、その道がなくなりました。

給与制度には「生活保障の原則」と「労働対価の原則」という2つの大原則があります。食えない水準の給与制度はダメが「生活保障」、やったらやっただけの給与を支払うべきが「労働対価」です。“最低賃金を1,500円にせよ”といった引き上げ系の話は「生活保障の原則」に関わる話です。物価が上がっているのに賃金が上がっていない(実質賃金が下がっている)に対応せよ、ということです。

問題は“やったらやっただけ”対策です。

“やったらやっただけ”は賞与で報いる。これは一つの方策です。正論です。ただ、年1,2回の賞与は“今日頑張っている”に報いるものとしてはリアルタイム感がありません。もちろん、給与のためだけに働いてるわけではないでしょうから「やりがい」という報酬もあります。ただ、社員からすると、生活との見合いで今月はちょっと入用があるというときに“稼いでなんとかする”ことができないのです。

副業という手段はあります。ただ、本業で成長途次にある人にとっての副業は、特殊技能を有する一部の人を除くと”バイト“的な仕事しかないでしょう。そうなると、”こんなにやってるのにバイトしないといけないのかよ“という何とも言えない鬱屈たる気持ちになるでしょう。家族のこともあり、転職を本気で考えるようになってしまいます。

きれいごとを言うようですが、副業の最大の利点は「自社以外のヒト、仕事の進め方、他業界」に触れることによる成長機会です。“稼ぐ”は二の次だと私は考えています。

ではどうしたらよいか。私のお薦めは「Spot Award(スポットアワード)」です。スポットアワードはその字のとおり、良い働きをした社員に対してその場(スポット)で報奨するものです。報奨のタイミングは毎月です。

従来のスポットアワードはお金だけでなく、今月の最優秀社員としての表彰、CEOとのランチ、その会社ならではのグッズ(マグカップやTシャツなど)の授与、特別休暇といった非現金報酬で行われることが多かったのですが、これを現金でやろう、という提案です。

かつて某外資系でこのような制度を導入しました。
・10名あたり40万円(一人あたり4万円)のスポットアワード原資を課長に渡す
・課長はそれを毎月誰かに支払う(キャリーオーバーなし)
・対象者は最多で3名まで
・支払い基準、金額は課長の裁量
・ただし、上長にスポットアワードの対象、支払い方についての事前相談は必須
・支払い方は「現金」でチームミーティングの中で授与する
(当然ながらスポットアワードの原資は毎月引き当てておきます)

支払い基準については敢えて課長の裁量としました。評価基準などの細かなルールは設けませんでした。一方で課長はチームミーティングの中で授与するため、スポットアワード認定基準について全員の前で話さねばなりません。そうすることで課長の評価の眼も鍛えられることになります。評価の眼が曇っている課長の場合には上長が補正します。(それをしないと“不公平”コールの嵐になります。)

現行制度を大幅に変えなくてもできます。社員の“稼ぎたい”に応える制度を用意してはいかがでしょう?(若手流出の防止策にもなります。)


おまけー1:1週間ほど海外へ。成田帰国時にイミグレーションで機械によるパスポートの写真認識ができず。
職員:いやー、同じ顏ですよね・・・再入国者のレーンに行ってもらえます?
(この認識精度だと却って不正入国を助長するのでは・・・、大丈夫かデジタル庁!)

おまけー2:税関でVisit JapanアプリでQRコードで通過しようとしたら、「パスポート番号が一致しません」というエラー表示に。
職員:パスポート番号合ってますよね。こういうときは・・・(といって言語を他国語にスイッチ)
はい、OKです。(大丈夫かデジタル庁!!)



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