1034号「成長支援のための研修は「労働」か?」(メールマガジン「人事の目」)

会社が社員のために用意する研修には2種類あります。一つは担当する仕事そのものを遂行するために必要な知識やスキルを習得してもらうための研修。もう一つは、対象者の成長を支援する研修です。

成長を支援する研修は、会社からすると対象者への投資です。自社を辞めるかもしれない人達に会社として時間と経費をかけているのです。この時間の本質的な意味合いとしては「労働」ではないと私は考えます。

ところが労働基準法には「投資」という概念がありません。会社が企画主催するものへの参加は、その内容に関わらず、すべて「労働時間」ということになります。所定内時間を超える時間については「時間外手当」の対象として考えねばなりません。これに関する弁護士見解を調べてみても、それを肯定するものばかりです。あくまでも、労働者は自分の時間を会社に提供し、その見返りとして報酬をもらう存在という考えしかないのです。

私はこの考え方に大いに不満があります。

自分の時間を提供して仕事をしている、という方々もたくさんいることはわかっています。ただ、そうではなく、仕事を人生の一部として捉え、仕事を通じて成長していきたいと考える人達も相当数いるはずです。そういう人達にとって、現行の労働基準法は困りものです。
経験不足、能力不足から既定時間内に仕事が終わらず、定時を超えて仕事をする場合も、その時間が「労働時間」とカウントされ「時間外手当」の対象となります。そうなると能力が高いひとほど“もらいが少なく”なります。かつて、夕方までぶらぶらして定時近くなってから本格的に仕事にかかり時間外手当を請求している人たちを目にして憤然たる想いをしたことがあります。

とある優秀な若手社員から自分を成長させるために“もっともっと”仕事をしたいのに、残業になるからといってやらせてもらえないので、退職を考えている“と聞きました。

会社の中には、膨大な業務量を課したり、サービス残業を強いたりするようなブラック企業がまだあることから、法律で縛りたくなるのはわかります。ただし、こうした企業は少数だと思います。そんなことをしていたら、この人手不足時代に人が集まりませんから。一方で、法律が厳格に運用されることにより、法律違反になることを怖れて、会社側が成長支援のための研修機会を制限したり、所定内時間を超えても仕事をしたいという若手の意欲を抑えることになってしまうのは、おかしいと思っています。

これを解決できる方策が「ホワイトカラーエグゼンプション制度」なのですが、これが年収要件もある「高度プロフェッショナル制度」の枠組みとして運用されているので、これから高度プロフェッショナルになりたい人たちにとっての環境が整っていません。

年収要件を撤廃すると制度を悪用して低賃金で働かせるブラック企業がでる、とよく言われます。そういう企業がでるだろうことはわかっています。しかしながら、“悪いことをした企業、しそうな企業があるから、それができないように法律で縛る、というやり方を続けていると、ルールばかり増え、イノベーションが抑制され、増えたルールを監督する官僚的な仕事が増え、ますますイノベーションが抑制される、というどう考えても未来のためにならない展開になると思います。

昨今のこの風潮に対しても大いに問題意識があります。

おまけー1:2025年4月4日(金)「社会人1目だからそこ学ぶリーダーシップとスキル講座」をオンラインでやります。13時から16時の枠がまだ募集中です。ご自分の会社の新人に参加させたい方は以下よりお申込みください。(申し込み締め切りは3月7日です。)
(対象は入社3年未満の新人です。人事担当者、上司のオブザーブ参加も有償ですがOKです。)
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おまけー2:新幹線の中で言葉を覚えたばかりの幼児が
“もうしわけございません。すぐにやります。もうしわけございません。すぐにやります・・・”とずっとつぶやいていました。熟睡中の両親が家の中で最も使っているフレーズなのでしょう。

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