1055号「上司と部下の関係性を見直す」(メールマガジン「人事の目」)

今日のテーマは“今後の上司と部下の関係”です。

時代や社会の要請によって、物事は少しずつ変化していきます。それはある日突然変わるものではなく、気がついたときにはすでに変わっている──そんなふうにして移り変わっていくのが常です。

感度の高い組織は、時代や社会の変化を先読みし、自ら進んでスタイルを変えていきます。一方で、変化に鈍感な組織は、“最近、人がなかなか採用できなくなってきたな…”、“若手の離職が増えてきた…”、“業績が伸び悩んでいる…”といった兆しが現れてから、ようやく慌てて対策を講じようとします。しかし、その時にはすでに手遅れで、変革には多大なコストがかかるうえ、思うように成果が出ません。結果として、感度の高い組織が生き残り、鈍感な組織は徐々に衰退していくのです。

私が「先取り」すべきと考えていることの一つは、「上司・部下」の垂直的な関係構造の見直しです。この上下関係はすでに溶解してきていますよね。

もちろん例外もあります。たとえば、作業手順や報告系統が曖昧になると、事故・品質不良・生産停止といった重大なリスクに直結するような事業では、上司と部下の垂直構造が今後も一定程度維持されるでしょう。

それでも、変化は確実に起きていきます。絶対的な命令系統は、状況に応じた責任や役割分担へと変化していきますし、すべての判断や決定を上司が一手に担うのではなく、現場が情報をもとに自律的に判断する場面も増えていくはずです。

かつては、現場の情報は上層部に上がり、意思決定の材料は上司が独占していました。人脈や経営状況といった重要な情報も、「知っているのは上司だけ」という状況が当たり前でした。「何をどう判断すべきか」は上司だけが理解しており、部下には「判断されたことを実行する」役割が求められていました。仕事の背景や意味が共有されないまま、言われた通りに動く――そんな場面も少なくなかったはずです。

こうした構造が、上司と部下の垂直的な関係を生み、長く維持されてきた背景にあります。しかし、いまは違います。

現場においてもリアルタイムで顧客の声、経営数値が見える時代になりました。目的や戦略が社内共有され、全員が「なぜ」を理解できる環境が整いました。社内SNSやチャット、OKRなどで、情報のオープン化も進行しています。優秀な人材であれば、指示を待たずとも自分で「何が問題か」「どうすべきか」を考えられるようになりました。「情報を持つから偉い」という構図が崩れ、「共に考える」関係になってきています。

さらにAIの到来により、個々人の知識を凌駕する情報に誰でもアクセスできるようになりました。これにより、上司と部下の情報の非対称性はほぼなくなりました。(経験差はあります。)

世の中が大きく変化しているにもかかわらず、従来のピラミッド型の組織運営を続け、上位者が依然として「私の言うとおりにやれ」といった指示・命令型のマネジメントを行っているような組織は、もはや働き手から選ばれなくなっていきます。

さらに、指示・命令・管理型のマネージャーを優遇するような人事制度のままであれば、自律的に動ける人材ほど、自由度の低さに嫌気がさして、その組織を離れていくでしょう。結果として、組織は徐々に官僚化し、失敗しないことが最優先される風土が根づき、新たなチャレンジは掛け声だけに終わります。そうなれば、組織は次第に衰退モードに入っていくのです。

そうならないために。これからの時代に合った「上司と部下」の関係性を考え始める時です。

おまけー1:人事マネジメントの今の“常識”を疑い、未来像を予想しソリューションを考える勉強会を開催します。

「2035年人事研究会 ~ 10年後の人事マネジメントを考える」
2025年11月7日(金)8日(土)於:セミナーハウスフォーリッジ (一泊二日の合宿プログラム)
参加費はお一人100,000円(税別)(セミナー費用、宿泊費、食事代込み)
募集人員 15名  参加資格:人事の業務に関わる(関わった)管理職、担当者
(年齢、役職、人事経験の長さ、会社形態、規模、内資・外資は問いません。)

今日のテーマのような内容を一緒にディスカッションしましょう。(先着順)※1社1名まで。
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おまけー2:自民党の苦戦が伝えられていますね。報道されている幹部のスタイルが時代に合わなくなってきているということだと思います。(これはオールドメディアにも同じことが言えます。)




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