1066号「配置の成功確率を高めるために」(メールマガジン「人事の目」)

“優秀”だからといって、“なんでもできる”わけではありません。

たとえば、こんなことは起きていませんか?

「新たな事業を立ち上げるので、ここは優秀なA君にお願いしたい!」という理由で、A君が所属する部門を説得し、新規事業立ち上げ組織のリーダーに抜擢。ところが、立ち上げは難航し、計画未達が続きます。次第にA君に対する風当たりが強まり、ついにはA君のメンタルも疲弊してしまう…かつての輝きを失う結果に。(元のポジションではB君が活躍しているのでA君を戻すこともできません。)

仕事ができる=優秀、というのは確かです。しかし、その人が高いレベルで仕事をこなせるのには理由があります。

優秀=質の高い仕事ができるメカニズム

まず、仕事そのもの(業界、職種、役割)が本人にとって好きかどうか。これは基本レベルの高さを決める要素です。

次に、実力要素。これは、その人が持つスキルセット(業務に必要な専門スキル、どんな仕事でも役立つポータブルスキル、心のもちよう)、これまでの経験を通じて学んできたこと、そして個性の掛け算で決まります。

さらに、やる気(モチベーション)が加わることで、「安定的に質の高い仕事=優秀さ」が生まれます。

冒頭のA君のケースを考えてみましょう。基本的なやる気は問題ないとして、新規事業の立ち上げは彼にとってワクワクする役割だったのでしょうか。求められるスキルは備わっていたのでしょうか。スピードやリスクテイクが必要な新規事業立ち上げという役割に、A君の個性はフィットしていたでしょうか。

仕事の「好き/興味」は本人にしかわかりません。

また、「やる気」も上司やチームの関係、物理的環境、使命感、報酬、自己効力感、裁量、目的、さらには家庭環境や心身のバイオリズムなど、多くの要因で左右されます。周囲は支援できますが、最終的には本人次第です。

一方、実力要素は、経営や人事といった配置側が判断できる部分が多くあります。新規事業に求められるスキルセットを明らかにし、候補者のスキルセットと照合します。また、新規事業推進で高いパフォーマンスを発揮している人がどのような経験を積み、何を学び、どのような個性を持つのかを分析し、候補者と比較します。

完全にマッチすることはありません。しかし、何が足りないかを把握できれば、補うための配置やトレーニング計画を立てられます。

これらのプロセスを経ずに、“じゃ、よろしく!”と配置してしまうと、成功確率が低いのは当然です。結果として、誰も真似できない人材だけが残り、ポテンシャルの高い人材が潰れてしまいます。

ポテンシャルの高い人材に多様な経験を積ませ、成長を支援することこそが、成長支援の要諦です。
その際、成長のために配置するキーポジション(重要な役割)については、実力要素を可視化しておくことが重要です。

実力要素を可視化したものを「キャリアマップ」といいます。詳しくはこちらをどうぞ。
https://indigoblue.co.jp/jinjinome_1037/ (「人事の目1037号」)

おまけ:オフィス移転の話が出たので、担当者が探してきた複数の候補地のうちの一つを、こっそり視察してみました。

1階ロビーに入ると、いきなり3歳くらいの女の子が「ママがいないの」とつぶやきます。女の子を3階の保育園に連れて行き、再び1階に降りると、今度はオーストリア人の男性に「Excuse me, where is YAMATO acupuncture therapy?」と尋ねられました。仕方なく5階にある“やまと”という鍼治療院(看板は日本語のみ)へ案内します。

その後、再び1階に降りたところで、宅配便の方に「すみません、7階の方…ですよね?」と声をかけられました。

――この時点で、この候補地はオフィスとしては完全に不適、と判断しました。




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