1077号「情報が経営に上がらない」(メールマガジン「人事の目」)

経営陣にとって、最も怖ろしいのは
「情報が届かないこと」です。

30名以下の小さな組織であれば、
特段何もしなくても現場の様子は見えます。

しかし、組織の規模が
100名、300名、1,000名と大きくなり、
階層が増えるにつれて、
情報が届かなくなる可能性は一気に高まります。

経営が知らないところで、
次のようなことが起きているケースは珍しくありません。

  • 営業現場で不正行為が行われている
  • 下請法(来年からは取引法)違反が行われている
  • ブランドを棄損する行為が行われている
  • 機密情報が漏洩している
  • 重大なインシデントにつながる兆しが放置されている

これらが発覚し、顕在化し、
最終的に責任を問われるのは経営陣です。

実際に、
私が個人的に関わっている企業でも、
今年、同様の事案が起きました。

本当に致命的なのは、
問題そのものではありません。

最も致命的なのは、
「問題が存在しているという情報が、経営に届かないこと」です。

もし早い段階で情報が上がっていれば、
大事になる前に手を打てたはずです。

対策には、
仕組みづくりと、社員(管理職を含む)の意識強化、
この両方が必要です。

仕組みとしては、
ラインを通さない別回線を必ず持つことが重要です。
内部通報や経営直結のホットラインは欠かせません。

大事故につながりそうな
小さな違和感や兆しを、
日常的に定点観測することも必要です。
クレームの変化、
好調すぎる実績、
現場で感じるざわつきなどが対象です。

評価制度も使えます。
問題を早く上げた人を、
きちんと評価することです。

経営陣が、
非公式のヒアリングを行うことも有効です。

意識面では、
トップが「悪い情報を歓迎する」と
言葉にして伝えることが重要です。
「報告すると損をする」という心理を壊さなければなりません。

通報は、
善悪の問題ではありません。
会社と自分を守る行為だ、
という位置づけを共有する必要があります。

何を経営に上げるべきか、
その判断基準を学ぶ研修も有効です。

悪い情報を上げた人を否定しない。
犯人探しをしない。
この姿勢を徹底することが不可欠です。

私の経験上、
最大の鍵を握るのは中間管理職です。

中間管理職の
「様子見」
「まあいいか」
この黙殺の連鎖が、
本来届けるべき情報を途中で消してしまいます。

その結果、現場には、
「どうせ言っても無駄だ」という
あきらめムードが生まれます。

中間管理職には、
次の一つでも当てはまったら、
管掌役員に報告する、
と明確に決めておくべきです。

  • 「気持ち悪い」「違和感がある」と感じる
     (言語化できなくても構いません)
  • 自分の裁量では止められないが、おかしい
  • 昔からの慣行だが、おかしい
  • 法令・契約・規程に触れる可能性が、1%でもある
  • 社外(顧客・取引先・SNS・マスコミ)に出たら、説明できない

階層が2つ以上ある組織では、
これらの手立てを、「管理職の役割責任」として
きちんと整えておく必要があります。

それは経営陣の身を守るためであり、
同時に、会社そのものを守ることにつながります。

特にオーナー企業は、
構造的に情報が上がりにくい体質になりやすい。
その点は、強く意識しておくべきでしょう。

おまけー1:京都がガラガラです。中国人団体が来ていないだけでかなり状況が一変しています。京都好きだが、外国人で混んでいるから二の足を踏むなーという人は今がチャンス!

おまけー2:その京都で地元の銭湯に入ってみました。歴史ある町の銭湯ですが、ジェットバス、電気風呂、薬風呂、サウナがあります。入浴料550円。

サウナに入ったところ、「おー、にいちゃん、そこ座れや」と奥にいた70代の男性2名に声をかけられました。

「最近のわかいものは風呂に入るルールをわかっとらん。せめて“前”くらい洗いや。にいちゃん、どう思う?」
「この前なんか、せっけんまみれで湯船にはいろうとするやつがいたから、どやしつけてやった、にいちゃん、どう思う?」
「けつにティッシュはさんどるやつもいた。にいちゃん、どう思う?」
(“そうですねー”としか言えない)
「にいちゃん、なんや、そうですねーばっかやな。」
(もう、でたい)




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