多様化する働き方と、選ばれる企業(「人事の目」825号)

働き方の多様化で「正社員」の概念は崩壊する

1月21日、「IHIは国内の正社員約8千人の副業を解禁」と言う報道がありました。併せて、ダイハツ工業、三井化学、三菱ケミカルホールディングス、トヨタ自動車についても副業解禁事例として紹介されていました。この流れは加速していくでしょう。

加速に伴い「正社員」という概念が壊れていくと思います。改めて見てみると「正社員」という表現はすごいですね。正しい社員。それ以外の働く形態は“正しくない”ということでしょうか。確かに、大企業でアルバイトから正社員になるのは長き道のりでした。まずは、契約社員、その後、準社員、やっと正社員。こんなプロセスが一般的でした。やっている仕事は同じでも正社員の方が時給が高く、意識面の序列でも上。さらに正社員の中でも「プロパー>中途入社」という意識がありましたね。悪意のない洗脳が長らく続いてきたのだと思います。

この「プロパー正社員至上主義」という洗脳を解きましょう。これまでは会社の壁はコンクリート製でした。今やカーテンになってきています。いろいろな人がカーテンを開け閉めして出入りする。そんな「場」に会社がなってきています。近い将来、その「場」では、期間の定めのない雇用の人、有期雇用の人、業務委託の人、インターン、ボランティアなど様々な立場の人たちが働いているのが当たり前になるはずです。

仕事ができて、かつ人格が良い人にはどんどん声がかかります。そうでない人は事実上の“失業”状態になります。どの会社でも“失業”状態の人に高い給与を払い続けるほど余裕はありません。社内失業状態の人たちは退出を迫られるか、最低限の給与となるでしょう。カーテンの世界では、一人一人が自立したプロの仕事人になることが求められています。たくさん声がかかっている人の報酬はその分増えます。

優秀な人材を引き寄せる、企業の「体験価値」

正社員 働き方

一方で、会社側もうかうかしておられません。“そこで仕事がしたい”と思ってもらいませんと誰もカーテンを開けてくれません。仕事が与えられるのを待っている集団と仕事を取りに行く集団とではどちらが成長できるか、これは自明です。上層部が“俺の言った通りにやれ”的なマネジメントをしている会社では優秀な人がカーテンを開けて出ていき、誰も入ってこないということになります。“副業なんて、とんでもない。わが社には早い。”と上層部が会社の壁をコンクリートのままにしている場合は最悪です。洗脳されていない優秀な若者は辞めて出ていきます。カーテンであれば在籍したまま出入りしていますので、まだましです。結果として仕事を与えられるのを待っている人だけの集団になります。

“そこで仕事がしたい”と思われるかどうか。これは、そこに「体験価値」があるかどうかです。

「体験価値」を感じるのは、

・そこが「居場所」だと思える
・その「居場所」が世の中で好意的に評価されている
・その「居場所」にいることで成長実感がある

会社の経営陣はこれらを意識してマネジメントをすることが求められます。個々に対して、「プロになれ!」と期待するのであれば経営陣も体験価値を提供できる場づくりに汗を流すべきだと思います。

おまけ

おまけー1:先週のメルマガで書いたとはいえ、人の髪型を見て「ほう・・・。」と言うのは止めてほしい。

おまけー2:1月27日(水)の19時から21時にオンラインでシンガポール和僑会主催で「ミーティングファシリテーション・ワークショップ型講演会」をやります。

和僑会とは、世界各地で起業する人、企業のリーダーを目指す人、すべての「和僑」の人たちの育成と支援に尽くすコミュニティです。2004年に香港で生まれたそうです。

当日の模様のLIVE配信があるそうです。お時間の都合がよろしければ、ぜひ。
https://wakyokai-meeting-facilitation.peatix.com/


執筆

Indigo Blue 代表取締役会長
柴田 励司(Reiji Shibata)
上智大学卒業後、京王プラザホテル入社。在籍中に、在オランダ大使館出向。その後、組織・人材コンサルティングを専門とするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年には、38歳で日本法人代表取締役社長に就任する。以降、キャドセンター代表取締役社長、デジタルスケープ(現イマジカデジタルスケープ)取締役会長、デジタルハリウッド代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より株式会社Indigo Blueを本格稼働。

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