組織感情が乱れた、とある外資系企業の例
とあるクライアント企業の話です。本社(アメリカ)は、ローカル(日本)がグローバルオペレーションを理解していないと言っています。ローカル側は、本社が日本の商慣習やクライアントの特性を理解していないと言っています。まさに批判合戦。外資系企業で起きがちなことです。
本社とローカルの力関係があることから、ローカル側は本社からの問いかけに沈黙するようになりました。本社はこれを「サボタージュ」と捉えています。ローカル側は「何か発言したらクビになるかもしれない」と怖れています。クビになる前に・・・とローカル側の離職も目立ってきました。一方で事業は好調。世の中のためになる事業です。この事態をなんとかしたいという本社側からのSOS要請がありジャンプインしました。
第三者として双方の話を聞きました。ローカル側の胸襟を開いてもらうことに時間を要しましたが、だいぶほぐれてきました。ちなみに、ローカル側といっても純日本人は少なく、大半が日本を話すアジア系の人たちです。ローカル側はアメリカ人、イギリス人、イタリア人。登場人物だけ見るとまさにグローバル企業です。(マーサー時代を思い出します。)
いろいろ話を聞いて気づきました。本社側もローカル側も「この会社をより良くしたい」と言っています。同じことを願っているのです。どこの会社でもそうですが、自分が所属する組織を悪くしたいと思う人はいません。ところが上は下がやることをやっていないと糾弾し、下は上のやり方が横暴だと文句を言いがちです。組織感情が乱れているのです。この米国企業もその一例です。
なぜ組織感情が乱れるのか
一般に組織感情が乱れる原因は「聞いていない」と「パーセプション・ギャップ(認識のずれ)」です。
いかに優れた施策であっても、ローカルの当事者からすると“寝耳に水”。そうなると、本社発の施策の良し悪し以前に、当事者たちは感情を害します。“聞いてない”からです。“聞いてない”のネガティブパワーを軽んじてはいけません。当事者意識を毀損するどころか、一気に抵抗勢力になってしまうこともあります。上になればなるほど、“聞いてない”現象を起こさないように気を配る必要があります。大組織の場合、誰かが伝えているはずだ、という思い込みから現場の“聞いてない”が起こることがあります。施策発信者が自らコミュニケーションに気を配った方がよいでしょう。
“パーセプション・ギャップ”は普遍的な問題です。文化が違うと異なる認識を持つのは当たり前です。文化圏をまたいだコミュニケーションにおいては、その言動がどのように受け止められるのか、要注意です。ただし、同じ文化圏の中でも“パーセプション・ギャップ”はあちこちでおきます。上司部下、友人、親子、夫婦、近いはずの間柄であってもこのギャップは生まれます。
組織の中での立ち位置、利害、気質が異なると同じものを見聞きしても受け取り方が異なります。そこで自分が「正しい」(相手が間違っている)という意識のままでは事態は好転しません。意見は正しい、正しくないではないのです。同じか、違うかです。違う意見、異見に耳を傾ける姿勢をもちましょう。どんなに相手のことを“けしからん”と思っていたとしても、その異見に耳を傾けましょう。パーセプション・ギャップ解消の第一歩となります。
おまけ
おまけー1:人間ドックでバリウム検査実施。検査終了後に「下剤」をもらいます。朝から何も食べていないので、クリニック近くの中華料理店で食事をすることにしました。食べ始めてすぐに「下剤」の効果が発動。よしよし、とトイレに向かったところ、“あ、柴田さんじゃないですか、久しぶりですねー”と昔の部下に遭遇。(タイミング悪すぎ。)
おまけー2:しかしバリウム検査はどうして犬神家の一族(青沼シズマ)みたいな恰好をさせるのだろう。
おまけー3:3月5日に59歳になりました。それを機にというわけではありませんが、Indigo Blueの会長職のほかにやっている個人事務所(個人的な講演、執筆、アドバイザリー業務はこちらでやっています)のホームページをつくってみました。
https://randcompany.jp/
執筆
Indigo Blue 代表取締役会長
柴田 励司(Reiji Shibata)
上智大学卒業後、京王プラザホテル入社。在籍中に、在オランダ大使館出向。その後、組織・人材コンサルティングを専門とするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年には、38歳で日本法人代表取締役社長に就任する。以降、キャドセンター代表取締役社長、デジタルスケープ(現イマジカデジタルスケープ)取締役会長、デジタルハリウッド代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より株式会社Indigo Blueを本格稼働。
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