983号「社長、未来のためにかつてない変革を」(メールマガジン「人事の目」)

新社長人事が日経新聞の人事欄を飾る時期になってきました。前任者の任期満了、急逝、業績不振や不祥事による前任者の降板を受けての登板。新社長誕生の背景は様々ですが、いずれのケースであっても新社長の命題はかつてない変革の実行だと思います。

企業は長らく資本主義の世界でいかに自社が成長するか(儲けるか)ということをテーマに活動してきました。勝ち負けの世界でした。そのための戦略に知恵を絞り、事業計画を策定しKPIを設定。インセンティブ(鼻先のニンジン)で経営者や社員たちを動かしてきました。数字を達成するための不正や隠蔽。社員の実力、人格・意思を無視した目標設定と管理。勝つためであれば環境への影響は度外視、企業は公器なりと言いながら、社会貢献活動もアリバイづくり程度。人が全てと言いながら、社員の報酬は据え置き・・・。

このやり方はもはや限界だと多くの人が感じていると思います。世界に目を向ければ行き過ぎた格差と断絶が生まれ、高ストレス社会となり、そこからドロップアウトした人が負け組と称される。こんな状況ですから、未来に希望が持てず、出生率だって上向きになるわけがありません。

超高齢化かつ人口減少の日本は課題が山積のはずですが、政治の世界では相変わらずカネを巡る話がなくならず、2024年1月現在の与党、政権の支持率が1割台です。やれやれです。国の変革は残念ながらかなり遠い道のりのように思えます。(ただし、国を変えるのは有権者である我々です。政治腐敗と言われて久しいですが、議員を選んでいるのは我々なのです。この問題は別の機会に論じます。)

企業は違います。トップ、幹部、社員がその気になれば変革することができます。新社長たちにはぜひ未来を見据えて、未来のためにかつてない変革に取り組んでいただきたいものです。

変革には進め方があります。それをまとめたものがこの表(変革が実行されるメカニズム©柴田励司)です。



 

トップがすべきことは、①アジェンダを決めること(何を重点領域にするのか/しないのか)、②アジェンダ実行のための最適なキャスティングをすること、③社員の心に火を灯すこと、この3つです。

変革プランは①そのもの。変革を推進するリーダーの人選が②です。(現実的には事業推進のリーダーと変革リーダーは別になることも)③の社員の心に火を灯すためにはやり方があります。まず、全社員をいきなり対象にはしません。それぞれの事業セグメント、機能ごとに20%程度の人をターゲットにします。

組織の中にはちょっとしたきっかけで燃える人、燃える人の影響を受けて燃える人、何をしても燃えない人がいるものです。20%はこの“ちょっとしたきっかけで燃える人”をイメージしています。このため役職者、非役職者関係なく、「ネアカ、のびのび、へこたれず(これは名言ですよね)キャラで燃えやすい」人を選びます。この人達のことを古くはチェンジマネジメントエージェント、最近ではドライバーと称します。

このドライバーたちの心に火が灯り、“自分がやらなきゃ誰がやる?”という気持ちになることでその影響を受けた浮遊層がその気になり、変革が実現します。まずはドライバーたちの議論の場、トップからのコミュニケーション、変革活動に携わることが自分を成長させていると感じさせる仕掛け、これらのことを企画します。これらは詰将棋のようなものなので、順番を間違えたり、必要な要素が欠けてしまうと変革には至らないので要注意。

変革を志している新社長とそのスタッフの方々のご参考までに。


おまけ:気になっていた「僕は線を描く」を鑑賞。水墨画っていいですねー。

 

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