万策尽きた!それでもなんとかしなくちゃいけない!! そんな状況に身を置かれると、
自分の全知全能をかけて知恵を絞りだすのが人間です。逆に言うと、
そういう状況にならないと、なかなか知恵は生まれません。
平時に直面する様々な問題の解決は、知恵を働かすというよりも、知識の横展開で
なんとかなります。知識の横展開とは、自分の中のデータベースからソリューションを
引っ張りだして、目の前の事象に当てはめて解決することです。
知識がたくさんあればあるほど、当然に横展開の幅が広くなります。
テキストブック型の学習が役に立ちます。
デキるヒトは、自分自身の経験だけでなく、他人の経験をも自分の経験のように
蓄積しています。加えて、抽象力を働かせて、一見関係ない事柄に対しても
既存のソリューションを当てはめたり、別々のソリューションを新たに組み合わせたりして、
見事に対処しています。そういうヒトの動き方、発想については、傍から見ていても、
素晴らしいなあと思います。
ここには、目に見えない知恵があります。表面化はしていませんが、
“なんとかしなくちゃ!”というエンジンが働いているのです。
デキるヒトたちは、世のため人のためと、学習や仕事をするプロセスの標準化や
マニュアル化に邁進します。俗に言うエキスパートシステムづくりです。
これがあるので、経験値のないヒトでも短期間でベテランのように働けるようになりますし、
極めて効率的に知識の習得ができるようになるわけです。
テキストブックが充実していきます。
一方で、このエキスパートシステムが提供されればされるほど、一般人にしてみると
“万策尽きた!それでもなんとかしなくちゃいけない!!” という状況に遭遇することが
少なくなります。デキるヒトたちが、それこそ真剣に、 “一般人が万策尽きないように”
してくれるわけですから、当然そうなります。
これは、効率という点からは極めてありがたいことなのですが、ヒトをどんどん
馬鹿にする劇薬です。与えられたものを習得する力はつきますが、
自分で無から生み出す機会を奪っていきますので。
カーナビは知らない土地をドライブするときの強い味方です。
反面、カーナビが普及したことで道を覚えなくなりました。自分の知恵を働かすことが
“お呼びでない”からです。
エキスパートシステムは知恵あるヒトの”上澄み”部分を抽出したものです。
氷山に例えると、海面の上の部分です。ここに落とし穴があります。 氷山が存在するのは
海面下の部分があるからこそ。海面下の目に見えない部分に知恵あるヒトが
知恵ある行動やアウトプットを出すための知恵があります。
この部分はエキスパートシステムに抽出されません。この部分は極めて複雑なプロセスで
テキスト化は無理です。
エキスパートシステムが進化すればするほど、テキストブックの量が膨大になります。
だんだん、ヒトがエキスパートシステムの奴隷になっていきます。
そのテキストブックをこなすので精一杯になるからです。
お店やレストラン、ホテルに行くとすぐわかります。スタッフが店舗や接客の
オペレーションマニュアルといったエキスパートシステムに縛られているかどうか。
エキスパートシステムの奴隷になっているスタッフが見ているのは、お店だと
商品や陳列棚、レストランであればテーブルやお皿です。お客の顔は見ていません。
そこでは、お客が来店者1(カチッ)という感じになります。どんな想いや期待をして
そのお店やレストランに来ているのか、この辺りのことは情報として入っていません。
それは、来店者にもすぐに伝染します。そうなると、ただモノを売るところ、
ただ食事ができるところ、という機能提供の場として来店します。
そうなると安い方がいいのは当たり前。代替があればすぐにそっちに行きます。
これだけお客様が多様化した中で、これでは致命的です。
エキスパートシステムに頼るのではなく、あくまでも有効な参考情報として使う、
一番大切なのは自分の眼と感性に基づく自分の知恵。これを忘れてはいけない
と思います。
90年代のいわゆる米国型経営管理は、目の前の効率性を追求し、
経済合理性に反するものは全て無しというシステムでした。
これが、標準化、マニュアル化に拍車をかけたと思います。
経営は、個々のヒトの力を信じる。エキスパートシステムの行き過ぎた呪縛から解放する。
09年以降、そういう舵を切れるかどうか。ここに企業力の差が生まれてくると思います。
やるべきことは見えた。後はやるだけ。
おまけー1:
乗ってくると鼻歌を歌うヒトがいます。 CCCの社長室には、そういうヒトが結構多い。
しかし、ジャンルが偏っています。そこで、気がつくと”海はよー、でっかい海はよー”
と明らかに異なるジャンルを挟むことにしています。
おまけー2:
しかし、敵もさるもの。この”海はよー”の”よー”が”Yo!”になり、ラップ化していきます。
しかしこれ、DJ OZUMAあたりが歌ったら売れるかも。(企画だ!)