「個人の判断と組織行動が合っていないのはダメ。」
東芝さんの不正会計問題からこのことを思い出しました。
これは25年ほど前にオランダの日本大使館で働いていたときの学びです。
当時、“これ、おかしくないですか?”と聞くと、全員が“おかしい”と答える
ようなことが平然と行われていました。それに意見して怒られたこともあります。
私の組織とヒトに関わる問題意識に火をつけた原体験でした。
組織の個々は“おかしい”と思っているが、組織としてはその“おかしい”
行動がまかり通ってしまう。程度問題はあっても、東芝さんに限ったことでは
ないと思います。
問題が顕在化すると、上からの“無言のプレッシャー”があったとか、“逆らったら
生きていけないから、やむを得ずやった”とか、「上」が悪いという論調になりがちです。
そこで「上」を取り締まるために社外取締役の数を増やしてガバナンスを効かしては
どうかという意見が出てくるわけです。しかし、そんなに単純な構造ではありません。
これは組織風土の問題です。
社外取締役の数を増やすというのはわかりやすく、目に見える手立てです。外部から
「東芝問題を受けて、御社ではどのような対策をとっているのか?」と問われたときの
答弁としては有効です。もっとも、これが本質的な解決になるとは誰も思っていないでしょう。
そもそも社外取締役は、
“社内的に常識であっても、社会的には非常識な判断や行為”
“社長の暴走”
これらへの抑制力を期待されているわけです。他にも、自社の経営陣にない知見や
経験値を期待されていることもあるでしょう。これだけでも非常に大きな役割です。
一方で、組織風土は日常の個人の行動により形成されますから、日常業務に関わって
いない社外取締役がそこまで影響力を行使できるわけがありません。期待し過ぎです。
この問題の根幹にあるのはそういうことではないと思います。組織全体に蔓延している
「主体性の欠如」。これです。会社としては、これをなんとかすることに注力すべきだと
思うのです。
組織の中のあらゆる階層で「思考停止」が起き、疑いもせずに「上」の話を鵜呑みにする。
または内々で批判はしても「上」に意見することはなく、最終的には「鵜呑み」と
同じことをする。「上」は意見がないので自分の意見が“最良”だと錯覚する。
これが繰り返されて“裸の王様”を生む。
「横」で何か問題が起きていても、“自分には関係がないこと”として見てみない
ふりをする、あるいは批判はしてもアクションは起こさない。
これらはいずれも、組織の秩序を維持し、より良い環境にしていくことが自分の役割
であるという意識が希薄な社員が多いから起きることです。組織への帰属意識は
強いかもしれません。しかし、その場をなんとかするという意識には至っていない。
これが組織風土となり、普通に考えると“ありえないこと”が起きるのです。
全員が主体性を持って行動する組織づくりをスローガンとして掲げるのはOKですが、
現実問題としてそれは無理。全階層で15~20%程度の人に強烈な主体性をもってもらう
ことをターゲットに動機づけ、場づくり、仕組みづくりをすることをお薦めします。
“自分たちが会社をしょって立っているんだ”という意識をもった人間を意図的につくる
。こういう働きかけをすることが必要です。
この働きかけを「組織開発」といいます。いよいよ、この役割を担うチームの出番です。
(自分たちが会社をしょって立っているんだ、という意識の人たちは単に仕事ができる
だけでなく、Integrity(高潔さ)を持ち合わせていること。人選にあたって
ここを落としてはいけません。)
おまけー1:夏本番。今年もベランダにハンモックを出して、“マジックアワー”や“
星空を眺めてビール、という極めて快適なひとときを過ごしています。
ハンモック、風景に最近ではKindleが加わりました。
おまけー2:1976年にNHKで放映されていたドラマ「男たちの旅路」。最近、CATVで
放映されて懐かしく見ています。放映当時、中学生ながら、鶴田浩二さん演ずる
吉岡司令補の生き方に感銘していたことを思い出しました。
おまけー3:「DRESS」 9月号発売!
特集は「こんな日は美味しいものしか食べたくない」
男性が読める女性誌になってきました。 (^_-)