Vol.520  ポテンシャルの有無は”保身”の有無

あのヒトにポテンシャルがあるかどうか。よく語られる言葉です。

「Aさん」と「Bさん」がいて、今の実力は「Aさん」の方が上。但しポテンシャルは

「Bさん」の方が上。こんな場合、どこを見て、あるいは何からそう判断しているの

でしょうか。

仕事を依頼したときに「Aさん」は発注内容に忠実に仕事をします。

「Bさん」は発注者の意図をくみ取って仕事をします。

この違いだと思います。

アウトプットの精度は「Aさん」の方が確か。「Bさん」は時に大外れです。しかし、

「Aさん」はあくまでも発注した通りのものを出してくるので、そこに驚きはありません。

常に自分の掌の中。「Aさん」は依然として自分の部下です。

一方、「Bさん」が出してくるものには「驚き」があります。なんでそうなるの?という

「驚き」です。ひどい内容のこともあります。

しかし、自分が意図したことを「Bさん」が自ら深堀りして、自分に見えていない要素を

少しでも加えてくると、「Bさん」に対する見方が変わります。「Bさん」は部下ではなく

仕事上のパートナーになります。全体の出来が悪くても、です。

「Aさん」の行動の背景にあるのは、発注者に認めてもらいたい、評価されたいという欲求です。

だから発注に忠実であろうとする。その心底にあるのは、“叱られるアウトプットを出しては

いけない”という思いです。

「Aさん」が自分のことを頭がいいと思っている場合には、優秀な自分がこのヒトに評価されない

ようなアウトプットを出してはいけない!と思っていますし、(頭は良くないが)自分は

このヒトに忠誠を誓っていると思っているとしたら、その自分がこのヒトに評価されないような

アウトプットを出してはいけない!と思っています。

私はここに「Aさん」の“保身”を見ます。自分がイメージしている“自分なるもの”を

守ることに重きを置いているのです。

“保身”と言えば、このパターンもあります。こっちの方が重症です。

“そう言いましたよね・・・”です。

アウトプットの出来について注意をうけると、“この時、こういうメールをもらいましたが・・・、

おそらく私の解釈が不十分だったのですね・・・”的な発言をします。自分はあなたの指示に

従ってアウトプットを作成したのだから叱られる筋ではない。指示が悪いと行間で言っています。

こうした「Aさん」系の保身がポテンシャル(伸びしろ)を消していきます。

一方で「Bさん」はいい仕事がしたい、という欲求で動いています。叱られたら、

“ごめんなさい、と謝って次のアウトプットをだせばいい”と思っています。ある意味で

“お気楽”です。自分を守るガードはありません。どんどん可能性が広がります。

人はそこにポテンシャルを見ます。

“自分を守る”が根底にあると、経験がないことへのチャレンジが躊躇されます。どんどん世界観が

狭くなります。自分が持っているインプットの総量が枯渇したら、それ以上は伸びません。

最近、柴田塾やOrganization Theater(OT)で次世代を担うことが期待されている若者(30前後)を

アセスメントする機会が増えています。気づいてきたのが大企業になればなるほど、この「Aさん」

系が多い。しかも、頭がいいと思っている「Aさん」系です。保身の“殻”が硬い。

この“殻”を破ってあげたいと思っています。元来、地頭はいい人間なので、保身がなくなれば

ポテンシャルは一気に拡大するはずだからです。

私自身、社会人最初の2年間のホテルの現場で、嫌というほど“殻”を破られました。無茶苦茶な要求、

指導に“やってられるか!”と唇を噛むことも多々ありましたが、本館42Fのステーション(待機部屋)

でMさんというキャプテンウエイターに「柴田は自分が頭がいいと思っているだろう。でも、今は何も

できていないことをわかってるか?」と諭してくれたことが刺さりました。その時は正直、心の中で

強く反発しました。しかし、現実はMさんの言う通り。かっこつけていてもできないものはできない。

この開き直りが良かったと思います。

その後、マーサーの社長になったばかりのときも、この「保身」が復活。2年ほどアイドリング

(空回り)しました。そのときもあることをきっかけに“開き直り”ました。

気をつけないと“殻”をまとい保身に走るのが人間です。そこに気づかせてくれる機会、人の存在が

ポテンシャルを広げます。

おまけー1:CMのせいで「Lucy」 http://lucymovie.jp/ が観たくなっています。それにしても、

モーガン・フリーマンさんは観たい作品に全部登場してくるような気がします。

おまけー2:遺伝子情報サービスは従来の世の中を変えるきっかけの一つになります。

おまけー3:次世代旅行サービスのアイディアあり。問題は自分の時間です。

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