Vol.777「時代にそぐわぬ人事制度(メルマガ編)後編」(メールマガジン「人事の目」より)

前回からの続きです。

私が考える「新たな価値創造を担う集団向けの人事制度」について。
以下が基本コンセプトとなります。

‐その集団の全員が自分はプロフェッショナルであるという意識をもっている
‐階層はない(プロデューサーと実行メンバーという区分だけ)
‐仕事は組織から与えられるのではなく、自分で獲得、またはオファーを受けて実施する
‐所属組織はない(全員が同じ組織という位置づけ)
‐上司はいない(指示命令を受けて仕事をするのではない)
‐案件を獲得した人がプロデューサーとなり、必要なメンバーを社内外から選定し、オファーする
または、社内ネットワーク上に「Job posting(やりたい人募集)」をかける
‐報酬は、基本報酬と案件ごとの報酬の合算となる
‐評価制度による評価はない
‐時間管理は自己責任(24時間働くも、1か月休むも自己判断)
‐コンプライアンスなど全員受講がマストのものを除き、組織から研修への参加を要請されない

これを進めるために、プロフェッショナル全員が自分のプロフィール、実績、できること、
やりたいことを訴求するアカウントを社内のSNS上につくります。(Facebookの活用もあり)
案件を獲得した人がその実行のために、自分のネットワークや上記のSNSから必要なメンバーを見つけ、
仕事をオファーします。仕事のオファーに際しては実行時期と報酬を伝えます。
(30名以下なら、もちろん仕組は不要です。)

人気のある人は多くの案件に関わることになります。その分、報酬も増えます。人気があるのは
「実力」があり、好ましい「人格」だからです。その逆の場合には、当然ながら案件が来ません。
仕事のオファーが継続してくるということは“評価が高い”ということになります。
人事評価表を睨んだ評価は不要です。

案件照会に対する窓口、個々人のアカウントの作成・運営、報酬の支払い管理、秘書などの
サポート業務を担当する人もいます。この人たちもプロフェッショナルですが、固定給です。

プロフェッショナルは案件獲得による報酬の3%程度を組織の「評価プール」に上納します
(%は金額の大きさにより変動します。)。この上納金の合算がサポート業務担当者たちの
賞与の原資となります。案件の数が増え、その金額が大きければ大きいほど、サポート業務に
携わる人たちの賞与の金額も増えます。

プロフェッショナルは日常的にサポート担当者たちのサポートに感謝したいときに、
サポート担当者のアカウントに「感謝!」します。(いいね!みたいなものです。)
その集積から各サポートスタッフの賞与金額が決まります。多くの人に関わり、多くの人から
「感謝!」されている人は“評価が高い”ということになります。当然、賞与も多くなります。

仕事のオファーが継続的にくるために、または案件そのものを獲得するためには、自分自身を
高めていかねばなりません。どう自分を高めていくか、何を勉強するか、そのための時間配分や
必要経費も自分で計画し、実行します。

この考え方は「労働基準法」の仕事観とは異なります。労働基準法の仕事観は「仕事は誰かの命令に
従って行うつらいこと。自分の人生の一部を時間単位で提供していること。その見返りが報酬。」
だと思います。新たな価値創造に当たる人たちの仕事観は全く違うはずです。「仕事は自分の
意思でやる楽しいこと。時間では測れない。その見返りは体験価値と相応な報酬。」だと思います。

現行法下でやろうとするならば、全員、業務委託契約にする必要があります。それでいいと思います。
社員身分を休職扱いにして、個人事業主となってもらい、業務委託します。

2020年、大企業でもこうした新たなやり方への挑戦が表れてくることを期待して。


おまけ:ゴーンさん事件から学ぶことは多いです。「推定無罪」の原則が日本人に感覚的に
備わっていないことを痛感しました。だから法務大臣ですら「ゴーン被告は司法の場で無罪を
証明すべきだ」と発言してしまうわけです。しかし、多くの日本人がコメントを求められたら
同じようなことを言うでしょうね。

被告側が無罪を立証するためにあれこれ証拠をそろえるという設定の映画がいかに多いことか。
例えば、大好きな「素敵な金縛り」。あれを検察側が有罪を立証するためにあれこれやる設定に
したら、どんなストーリーになるでしょうかね。

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