企業が持続的に発展していくためには、組織を牽引するリーダーが輩出され続ける仕組みが必須です。多くの企業が、「次世代リーダーの育成」を重要な経営課題として捉えていることでしょう。
企業の変革を支援するIndigo Blueは、これまで「会社を変えたい」「次代を継ぐリーダーを育てたい」という経営者の方に多数お会いしてきました。
多くの企業が次世代リーダー育成の重要性を認識しているにもかかわらず、実際に育成に着手できない、理想の半分も実現できない企業は少なくありません。
しかし、今や次世代リーダー育成は企業にとって「待ったなし」の最重要課題です。なぜ今、次世代リーダー育成が重要なのか、実際にどのような育成プログラムが必要なのか、全5回に分けて解説します。
▼Indigo Blueの次世代リーダー育成コラム
【第1回】次世代リーダー育成こそ企業の最重要課題|意図的な育成が必要な3つの背景 【第2回】次世代リーダーを育成する5つのステップ|社内育成と外部資源の活用 【第3回】次世代リーダーの役割と定義・人材像|「遠心力リーダー」に必要なスキル 【第4回】次世代リーダー育成のポイント|インプット・スループット・アウトプット 【第5回】次世代リーダー育成を阻む課題とは|学習モデルの四象限と理想的な学び |
第1回は、次世代リーダー育成が今までになく企業の重要課題となっている背景を解説します。
Contents
なぜ今、次世代リーダー育成が重要なのか
企業経営における次世代リーダー育成の重要性は、今までにない危機感をもって高まっています。新しい産業技術の台頭や、日本の少子高齢化、働き方の多様化など、企業を取り巻く環境の変化が大きな要因として考えられます。
その中でも、企業が認識すべき重要な変化は以下3つです。
- ビジネスモデルの変革スピードの加速
- 企業の成長ステージの変化
- ガバナンス強化による修羅場経験機会の減少
これらの変化によって、企業には”意図的な”次世代リーダー育成の必要性が高まっているといえるでしょう。それぞれの変化について詳しく解説します。
①ビジネスモデルの変革スピードの加速
昔から「企業の寿命は30年」と言われてきました。これは、100年を超えて存続している企業の多くが、30年に1度の割合で大きくビジネスモデルを変えているという実績から由来します。
第四次産業革命や働き方改革などを経た今、この「30年」という期間は短縮され、今後は5年・3年とさらに短くなっていくことでしょう。つまり、企業は今までにない短いスパンでビジネスモデルを変革していく必要に迫られているのです。
ビジネスモデルを変える、戦略を変える、スピードを上げる。これらの変革はすべて組織と人に依存します。どんなにビジネス環境が変わっても、優れた人材の集団であれば、環境変化に対応していくことができるからです。
だからこそ人材育成は変革の時代の最重要課題と捉えられ、多くの企業がその仕組みの構築を急いでいます。
②企業の成長ステージの変化
企業の成長期には、リーダーが育つ土壌そのものがあります。高度経済成長時代には、長らく事業の成長に人材の成長が追いつかない傾向がありました。
課長に就くにはまだ早すぎるだろう人材でも、課長のポジションが次から次へ生まれてしまう状況では、昇格させて成長させるしかありません。ストレッチのあるポジションに就いた人材は、さまざまな失敗を繰り返したり、試行錯誤をしていくうちに、課長としての自覚と実力を身に着けていきます。
現在企業の経営者として活躍されている方は、このような状態を体感してきている方が多いのではないでしょうか。高度経済成長期の日本には、否応なしに人が育つ土壌があったのです。
しかし、企業の成長期が過ぎ安定期に入ると、状況は変わります。「上の詰まった組織」では、若手がストレッチしたポジションに就き、大きく成長するチャンスがありません。「リーダーを育てる場」そのものが、組織の中に生まれにくくなるのです。
ポジションが人を育てる環境が減った今、通常業務をこなすだけでは、人材の成長は常に「現在のリーダーのマネジメントの範疇」でしか広がりません。だからこそ、経営の視点で人材育成する仕組みを通常の業務の範疇を超えて意図的に築く必要があります。
③ガバナンス強化による修羅場経験機会の減少
企業の成長と関連して、「ガバナンスの強化」による副次的な弊害も見逃せません。
日本を代表する大企業であっても、その創業期においては想像もできないような「修羅場」を体験しています。前例のない大規模なトラブル、判断を誤れば企業の存続に直結するような危機を、多くの経営者が実体験として乗り越えてきました。
しかし、企業の成熟とともにガバナンスが強化され、修羅場を未然に防ぐ体制が整っていきます。
ガバナンスの強化自体は、もちろん重要かつ必須です。しかし、ガバナンス強化の結果として企業における「修羅場」が減り、人材が「修羅場を潜り抜ける機会」も減少している点に問題があります。修羅場の減少が、リーダーの有事対応力や経営総合力を鍛える場の喪失につながっているのです。
企業の不祥事が世間を賑わせ、その後の対応の悪さにさらに批判が高まる事態を目の当たりにした方も多いでしょう。修羅場体験の喪失により有事対応力を養えなかった結果ともいえます。
“意図的な”次世代リーダー育成が必須
今回は、次世代リーダー育成が企業の最重要課題となっている背景を解説しました。
企業の成長が著しかった高度経済成長期から安定期に移行したことで、これまで自然発生的に起こっていたリーダー育成の機会は減少しています。同時に、目まぐるしい産業技術の進化やグローバル化により、今までよりも早いスピードでビジネスモデルの変革が求められ、その推進を担う人材の育成が急務となっています。
これらの変化は、企業が”意図的に”次世代リーダーを育成する仕組みを持つことの重要性を示唆しているといえるでしょう。
次回のIndigo Blueの次世代リーダーコラム第2回では、次世代リーダーを育成する5つのステップについて解説します。ぜひ参照ください。
▶Indigo Blueの「次世代リーダー育成ソリューション」については、コチラをご参照ください。
▶修羅場体験プログラムOrganization Theater®については、コチラをご参照ください。
記事監修
瀧谷 知之(Indigo Blue 取締役)
トーマツ コンサルティング(現デロイト トーマツ コンサルティング)に入社し、通信ハイテク業界の戦略立案/変革支援に従事。 その後ジュピターTVを経て、ツタヤオンライン、TSUTAYA、カルチュア・コンビニエンス・クラブで経営企画/経営戦略室長として、ネット事業領域を中心に戦略立案や事業改善、新規事業企画、赤字事業の再建/撤退、M&A等を手掛ける。 2010年に株式会社コラビーを設立し代表取締役CEOに就任のほか、パス株式会社の代表取締役COOおよび各グループ会社の代取/取締役を経て現在に至る。今までに上場企業含め9社の代取/取締役を経験している。