975号「生産性向上の足かせ」(メールマガジン「人事の目」)

日本生産性本部が「労働生産性の国際比較2023を発表しました。22年の日本の労働生産性は過去最低。就業1時間あたりの付加価値は52.3ドル(購買力平価換算で5099円)でOECD加盟38カ国中30位、1人あたり付加価値は年間8万5329ドル(同833万円)で同31位という結果になっています。

労働生産性が低いとは、少ない労働投入量で多くの付加価値を生む仕組みになっていないということです。内閣府の年次経済財政報告では「労働投入量の減少」や「設備投資の伸び悩み」をその原因として挙げています。

皮肉なものです。労働投入量が減っているので付加価値が高くならない、と発表している時点で、生産性が低い仕組みになっていることを認めていることになります。企業、団体の現場で働き方が変らず、能力が高まらず、付加価値を生む仕組みに変わっていないために、労働時間を制限した結果、「労働投入量が減少」し、生産性が伸びなかったということになります。中には目覚ましい生産性の向上を実現した企業、団体もあるでしょうが、日本全体となるとこれが現実です。長時間労働を抑制すれば生産性が高まるという仮説が現時点では検証されていません。

低い生産性議論でいつもやり玉にあがるのが長時間労働です。私は強制される長時間労働については反対派です。特に黙示的なプレッシャーによる長時間労働はとんでもないと思っています。若い頃に5時過ぎてから動き出す“おじさん”たちがいることに“怒り”を覚えたことを思い出します。”早くやればいいってわけじゃない。周りとペースを合わせて。“と注意されたこともありました。

当時から30年以上経過していますが、本質は変わっていないように思います。こうした”変わらない/変えない“人たちの存在が生産性向上の足かせであることは間違いありません。AIで仕事の効率化をと叫んでも“いやー、私は今までどおりで”という保守層がいる限り、劇的な改善は難しいでしょう。従来とは違うアプローチが必要です。

・長く働けば時間外手当により報酬が増える
・安穏としていてもペナルティがない(首にならない、降格しない)

この2つが元凶だと思っています。もちろん、一定時間労働力を提供することが求められる職種であれば時間で管理することが必要でしょうが、それ以外の職種については時間管理を止めた方がいいと思います。年収制限を600万円くらいに引き下げ、ホワイトカラーエグゼンプション制を幅広く導入すべきと考えています。

社会人経験が浅い若者たちが時間制限があるので思う存分仕事ができない、という現状は成長機会を奪うと思っています。長時間労働は強制されるものであってはなりません。ただ、時間を忘れて仕事に没頭することを知らずに年齢を重ねてしまうことを怖れます。没頭して仕事をすることが視界を広げ、実力を高める最良の手段だからです。

人事制度についても、毎年実力を認定する仕組みにして、昇格という概念をなくした方が良いと考えています。昇格は降格運用を厳格にやらない限り、“あがり”の中高年を生み出しやすいです。実力の鮮度と経験資産の大きさを問い続ける仕組みにした方が良いと思っています。

前者は国のアジェンダ、後者は各会社、団体のアジェンダです。


おまけー1:Netflixで「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」を観ました。これは映画化してほしい作品ですね。1本の尺が90分だったら、もっと深い作品になったと思いますが、年末の一気見にお薦めです。

おまけー2:そのうち、しっかり書きますが、自分で使ってみてとても良かったので、アロマテラピー(香りというよりも効能あり)商品をご紹介していくことにしました。ぜひ、お薦めセットを見てください。
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