私がマーサーのコンサルタント時代に「10年後の人事を考える」という勉強会を企画し、定期的に開催していました。90年代後半のことです。中計でいくら会社の方向付けをしたとしてもダメ。それを実行する「ヒトと組織」の方向付けをしない限り、“絵に描いた餅”になる、という問題意識からでした。
当時、アメリカ陸軍が、冷戦終結後の予測困難な世界情勢を説明するためにVUCA(Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性))という概念を使い始めていました。あれから約30年。もはやVUCAは当たり前になりました。今ではあまり語られなくなりましたね。
これからの「ヒトと組織」が目指す姿は、“どのような状況になろうとも、しなやかに適応できる柔軟と鋭敏さを持つこと”。「感受性と柔軟性を備えたレジリエンス」、これがこれからの組織人事マネジメントのテーマになる。私はそう考えています。
2035年、私の予測です。
- 社員・フリーランス・業務委託・副業者を組み合わせた柔軟なチーム編成が一般化。それに伴い、上司・部下という垂直構造が溶解している
- メンバーのスキルや志向に応じて最適なプロジェクトやポジションをAIが推薦し、キャリア開発や学習機会の提案がパーソナライズされている
- 成長は自己責任であるという認識が広まっている
- ワーク・イン・ライフが主流となり、働きがい・心理的安全性・健康などが重要な経営KPIになって、日々の業務内で「マイクロラーニング」や「AIコーチ」が行われている 等
なし崩し的にこうした状態になっていくのと、主体的にこうした状態に移行させていくのでは大違いです。“変わる”には理由があります。変えないと顧客に選ばれる商品・サービスの提供が難しくなるから。変えないと働き手に選ばれなくなるから。更に言うなら、変えないと社会から選ばれなくなるからです。
人事の継続性が・・・、労働基準法が・・・、組合が・・・などと言っていると時代の潮流に取り残されます。
今の仕組みは過去に作られたものです。作った当時は理にかなっていたはずです。ただ、時代の流れにより、徐々にその理が現実に合わなくなってきます。そうなると先が見えている人たちから、既存の仕組みから逸脱し始めます。厳密に言うとルール違反です。ただ、歴史を紐解いてみると、進化を導くものはルール違反です。現実に合っていないものに固執することはありません。
おそらく多くの人事パーソンたちが未来に向けて危機感を覚えていると思います。だた勃発する課題の対応により動きがとれなくなっていると推察します。ここは日常から離れて議論する場が必要だと考えました。
人事マネジメントの今の“常識”を疑い、未来像を予想しソリューションを考える勉強会を再開します!
「2035年人事研究会 ~ 10年後の人事マネジメントを考える」
2025年11月7日(金)8日(土)於:セミナーハウスフォーリッジ (一泊二日の合宿プログラム)
参加費はお一人100,000円(税別)(セミナー費用、宿泊費、食事代込み)
募集人員 15名 参加資格:人事の業務に関わる管理職、担当者
(年齢、役職、人事経験の長さ、会社形態、規模、内資・外資は問いません。)
参加ご希望の方は以下よりお申込みください。(先着順)※1社1名まで。
https://forms.office.com/r/yrGGLx2pAB
私も2日フルに参加いたします。みなさんとの議論を楽しみにしています。
おまけー1:全国で不登校者が34万人超と言われています。明らかに現在の公立の小中学校の仕組みが、今の子どもたちとその親の意思に合わなくなっているということだと思います。
おまけー2:「森のくまさん」の歌について。熊被害が多発する昨今、これを小学校で楽しく歌うのはどうか、とAIに尋ねたところ「歌を教える前後に「本物のクマは危険です」という防災指導とセットにする」という回答でした。
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