先日、世界的な建築家のお話を伺う機会がありました。
神奈川にある柱のない大空間、中国の水の中の美術館、山口県宇部市にある洞窟のようなレストラン──いずれも斬新な建築で知られる方です。
お話の中には、私にとって“我が意を得たり”と感じる言葉がいくつもありました。
「100%見えてからつくるのではない。60%の段階で始める」
「一度、建築的な知識を捨てる」
これは事業にも通じます。新しいことに挑戦するとき、最初から最終形まで見えていることはほとんどありません。もし完全に見えているのだとしたら、それは“新しいこと”ではないでしょう。完成イメージが60%ほどでも、まず走り始めることが大切です。あとは走りながら浮かんでくるアイデアを具体化していけばいいのです。
新規事業の立ち上げでは、周囲の人たちはその構想を共有できていないため、最終形をKPIや売上数字で管理しようとしがちです。しかし、これは創造性に蓋をしてしまいます。精緻な計画やKPIは、初期段階では作れません。管理するとすれば、「事業のビジョンがブレていないか」「発案者が本当に信じているか」という点です。
建築家の話に戻ります。建築基準法で想定されていないデザインや構造であっても、「大臣認定」という制度を活用すれば建築物として実現できます。建築基準法の枠だけで考えると限界が生まれます。まず“つくりたいもの”が先にあり、そのうえで法律の精神を守りながら実現方法を探る──発想の順番を逆にすることが必要だというのです。
新規事業でも同じです。「過去に失敗したから」「規制に引っかかるから」という理由からスタートすると、発想が広がらず、今あるものの延長にしかなりません。それでは面白くありません。
走りながら具体化するには、自分の中に“空きスペース”が必要です。日々の業務に追われ、心身が疲弊している状態では、新しい発想は浮かびません。
Vacationは、単なる旅行ではなく「自分をVacant(空にする)」ための時間です。日常から離れ、頭と心をリセットできる機会であれば、形は問いません。私の場合は、家事やウォーキング、クラシック音楽やバレエの鑑賞などが有効です。頭のマッサージも同じ効果があります。
「見たことのないものを見たいからつくる」 建築家がポロリとこぼした言葉が刺さりました。
0から1を生み出すのは、社会貢献や顧客価値の前にある、自分の好奇心です。自分が見たいからつくる──この衝動こそが、新しい価値を生み出す最大の原動力なのだと再認識しました。
おまけー1:アラフォー以上の学び直しの場「朝活のPHAZEリカレント」15期が終了。今回も終了後のコミュニティ化が活発のようでプロデューサーとしては嬉しい限りです。16期は10月8日(水)開講。事前説明会の申し込み受付中です。
おまけー2:来週のメルマガはお休みです。
記事はメルマガ「人事の目」で配信されています。