イノベーションはルールの逸脱から始まる
新しいことをやろうとするとルール違反になる。ルール違反とまではならなくとも、通例や慣習(しきたり)からの逸脱になるので、批判やネガティブな声が多発する。よくある話です。
その昔、ストックオプションが解禁されていなかったときのことです。高い現金報酬は払えないが優秀な人財を獲得したい、上場に向けて社員の意識を高めるインセンティブが欲しいということから、なんとかしようと、クライアントと一緒に知恵を絞り、有価証券信託を活用した疑似ストックオプションをやったことを思い出します。税制など整っていないことが多々あり、各方面からかなりいろいろ言われました。
更に昔、ホテルで人事をやっていたときにFHPなる企画を考えました。FHPとはFlexible Human resource Programの略、完全に造語です。繁閑差が激しい宴会サービス部門のサービススタッフを配膳会から派遣してもらうのではなく、社内の管理部門から経験者が交代で担当するというものです。当時私も昔取った杵柄で月曜日の11時ころにウエイターコートに着替え、13時ころまでサービスの現場に立っておりました。これにより、配膳会への支払いが相当減りましたが、管理部門の方々にはめちゃめちゃ不評でした。
高齢者雇用に見るイノベーションとルール逸脱
先日、総務省主催のイベントで“高齢者が活き活きと活躍する組織”というテーマで講演してきました。議論の中で、60歳定年後の再任用者の扱いが難しいという声がありました。その人の経験を活用したいが、若い管理職が元上司をマネジメントすることへの心理的抵抗、また上級管理職をやってきた人ほど“口は動くが手が動かない”、これをどうしたものか?というものです。
再任用にあたっては近くの別の自治体で働いてもらうのはどうか、と提案しました。業務内容は熟知していても、自分のことをほぼ知らない場所でリセットしてやり直す。過去の威光は効かない。シンプルにどれだけ仕事ができるか、組織に貢献できるかが問われる、そういう環境設定にしてはどうか?と。
しかし、これは現在の仕組みではできないそうです。再任用は同じ自治体に限ると。
新しいことをやろうとすると、ルール、しきたりから逸脱することになり、理解が得られにくいものです。ただ、それを恐れて“やらない”という選択肢はないだろうと思っています。むしろ、新しいことは理解されないもの、目に見える形で結果を残すことで初めて賛同者が出ると考えた方が良いと思っています。
世の中の変化をリードするものは制度やルールではありません。特異な事象が先行し、それを万人に説明するために制度やルールができるものです。ただ、時間の経過とともに、ルールや制度を守ることが目的化します。それが問題だと私は考えています。
いま私が変えた方が良いと思っていることは「時間管理」です。コロナ禍でリモートワークが一般化しました。リモートワークをする人たちをこれまでと同じ考え方で時間管理することには無理があると思います。ここをどう整理するか。新たな視点からの議論が必要だと思っています。(朝学の会で議論します。)
おまけ
おまけー1:品川に猿が出没というニュースを聞き、ほーと思っていた矢先、宮城県で「裏庭にクマが出るんですよ」と言われ、なんだか敗北感。
おまけー2:先週は「大津→京都→大津→東京→金沢→東京→仙台→東京→名古屋→東京」という新幹線三昧。グリーン車がシニア層で早朝からいっぱいでした。
おまけー3:名古屋のお土産店でのこと。「これください?」
「は?」(ビニールシートで聞こえない風)
「このぴよちゃん、ください。」「は?」(まだ聞こえないのか?)
「ぴよちゃん!!」(かなりでかい声で)
レジのおばさんが「はい!」と返事。(あんたじゃない)
執筆
Indigo Blue 代表取締役会長
柴田 励司(Reiji Shibata)
上智大学卒業後、京王プラザホテル入社。在籍中に、在オランダ大使館出向。その後、組織・人材コンサルティングを専門とするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年には、38歳で日本法人代表取締役社長に就任する。以降、キャドセンター代表取締役社長、デジタルスケープ(現イマジカデジタルスケープ)取締役会長、デジタルハリウッド代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より株式会社Indigo Blueを本格稼働。
関連するIndigo Blueのサービス
記事はメルマガ「人事の目」で配信されています。