「やりたくないこと」で鍛えられたメタ認知力
自分にとって「やりたいこと」ってなんでしょうか。またはその逆、「やりたくないこと」ってなんでしょうか。
ふだん、こんなことを考えていませんよね。「やりたいこと」「やりたくないこと」を意識して仕事や生活をしているわけではないと思います。
先日、ある方がこんなことを言っていました。
“やりたくないことが、人の個性を決めている”
“やりたくないことをやることから、やりたいことが見えてくる”
これを聞いて思い出しました。「社長」という仕事をしているときは「やりたくないこと」をやる連続だったと。
経営をしていると様々な利害関係者の利害を考える必要があります。上場していると特にそうです。事業の選択と集中・廃止、人員削減、借金返済猶予のお願、株主や取引先からの不条理な要求を呑むこと・・・・、結構たくさんありました。歯を食いしばって「やりたくないこと」をやっていました。
「やりたくない」と思っていた理由は、それをすることで痛む人が出るからです。事業廃止、人員削減はその代表格です。さらに自分のプライドを捨てないとやれないからです。不条理な要求を呑んだり、借金返済猶予のお願いをしたことなどは、まさにそれです。自分のちっぽけなプライドが痛みました。
なぜ、そんな嫌なことをやっていたか。それは「会社」のためだったと思います。再建社長のときはまさにそう。“やりたくない”なんて言ってられない状況でした。平時においてもそうです。自分が“やりたくないこと”を断行することが会社の次につながる、だから「やりたくないこと」をやっていたわけです。社長とはそういうものだと思います。
一連の「やりたくないこと」をやってきたことで鍛えられたことがあります。「メタ認知力」です。「メタ認知」していないと、とてもやりきれないことばかりだったからです。
メタ認知とは、自分が能動的に行っている言動について、もう一人の自分が客観的な立場から、その言動を調整したり調和したりする能力と定義されています。これにより、同時にいろいろなことをやることが出来るようになったと思います。しかも早くやれるようになったと思います。
可視化された「やりたい」リーダー育成や組織開発
さらに「やりたくないこと」をやってきたことで、“やりたいこと”の輪郭がはっきりしてきました。自己紹介の中で、「雇われ経営者を10年やった後の今は“自由人”で好きな仕事だけやることにした。」と話していますが、まさにそういうことです。
私は誰かが称賛されている姿を見ると感動します。ミュージカルや舞台のカーテンコールは大好きです。観客が役者たちを称賛し、役者たちの表情も素敵です。最近では大谷翔平選手の活躍とその実況中継に感動しています。誰かが称賛されるような場ではみなが高揚し、良い顔をしています。そういう場づくり、それこそ、私が考えるリーダー育成や組織開発なのです。
優れたリーダーがいる組織は明るく、活気があります。優れたリーダーを増やすことは特定の会社のみならず、社会を明るく元気にします。悩めるリーダーの相談にのったり、講演をしたり、コラムを書いたり、かつてない研修を企画したり、目的とすることは同じです。
“好きなことで生きていく”、ありがたいことにそれが出来つつあります。かつての「やりたくないことをやった」ことが効いていると思います。
おまけ
おまけー1:「アラフィフ以上の学び直し」(PHAZEリカレント)もまさに同根。“好きなことで生きていく”としたら仕事が楽しくないといけません。ポータブルスキルを磨き直しておいた方がいいと思います。
第二期(7月から9月)のオンライン説明会をやります。関心のある方はぜひご参加ください。
おまけー2:近所で大型のかたつむりを発見。観察することにしました。なんとアジサイの葉っぱはあげてはいけないそうです。知らなかった。
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執筆
Indigo Blue 代表取締役会長
柴田 励司(Reiji Shibata)
上智大学卒業後、京王プラザホテル入社。在籍中に、在オランダ大使館出向。その後、組織・人材コンサルティングを専門とするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年には、38歳で日本法人代表取締役社長に就任する。以降、キャドセンター代表取締役社長、デジタルスケープ(現イマジカデジタルスケープ)取締役会長、デジタルハリウッド代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より株式会社Indigo Blueを本格稼働。