管理職にこそ求められる、物事を多角的に見る姿勢(「人事の目」858号より)

物事にはいろんな側面がある

「中国で学校以外での学習が厳禁に、学習塾を敵視する習近平の本音とは」という記事を読みました。Newsweek(8月26日)です。義務教育段階の学習負担を軽減するため、学校以外の学習禁止を厳命。中国全土で学習塾や補習校の摘発が始まったという内容です。

https://www.newsweekjapan.jp/satire_china/2021/08/post-60.php

生徒たちの目の前で学習塾の教員たちが力づくで連行されていく。この背景に「思想教育」があると書かれています。記事の内容にビックリしたと同時に何となく違和感がありました。

中国人の知人に聞いたところ、全く違う意見でした。「今の中国では子供に勉強を強い過ぎている。遊ぶ時間もない。これは良くないから、この風潮を変えようということだけ。そんな乱暴なことはない。」

Both sides of the story..

現場を見ていないので、どちらが真実なのかはわかりません。ただし、一つのストーリーには必ず別の観点があります。それを聞いた上でないと判断はできません。

多角的な視野は、管理職に必要な「こころの持ちよう」の1つ

多角的 視点 管理職わたしたちの周囲の組織の中でいろいろな問題が起きます。そのときに、あらゆる観点の意見を聞いた上で判断していますか。

例えば、Aさんという課長がいたとします。上司のB部長はAさんの仕事の仕方について不満に思っています。アグレッシブなB部長からすると、物事を慎重に進めるA課長のやり方が気に入らないのです。課の業績は良くもなく悪くもない。もっとやれるはず、A課長のやり方に問題がある、とB部長は人事部長にAさんの降格、左遷を進言します。

B部長はAさんがいかに期待に応えていないのか、これをB部長の観点から説明します。具体的に事例をあげて説明するB部長の話には説得力があります。A課長は機能していない、そう判断しがちです。

Both sides of the story. A課長側の意見も聞かないと適切な判断はできません。

こういう場合、A課長から直接ヒアリングをした上で判断しようと思うでしょう。ただし、それだけでは不十分です。A課長の部下たちからも話を聞く必要があります。聞いたところ、A課長の部下たちはA課長の仕事ぶりを大変高く評価していました。A課長に助けられている、指導してもらっている、そう思っています。A課長は部下から見ると課長として機能しているのです。

こんなことはよくあります。一つの見解だけ聞いて判断していけません。一つの観点からの勧善懲悪は危険です。ただし、自分が当事者であるとどうしても自分の考えが“間違いない”と思いがちです。

Both sides of the story. 

自分の見解が偏っていないか、自分の感情に支配されていないか、冷静に判断するよう意識しましょう。上の立場の人こそ、この姿勢を忘れてはいけません。それが上位職者に求められる「心のもちよう」です。

今回の例において、人事部長がすべきことはB部長にA課長側の観点を持つことの助言です。それをせずに何らかのソリューションを展開してはいけません。

ちなみに、この「心のもちよう」がない人からは人が離れていきます。どんなに優秀な人であっても人が離れてしまうと大きな仕事はできません。気をつけたいですね。

おまけ

おまけー1:アンパンで、けしの実が乗っているのが「こしあん」、ごまが乗っているのが「つぶあん」だそうです。アンパンマンはどっちか、と思って調べたら「つぶあん」でした。

おまけー2:「石つぶて」というWOWOWのドラマをネットフリックスで一気見しました。外務省機密費詐欺事件を描いたノンフィクションです。私が在オランダ日本大使館で働いていたときにこの手の話はありました。なかなか見応えがあります。

執筆

Indigo Blue 代表取締役会長
柴田 励司(Reiji Shibata)
上智大学卒業後、京王プラザホテル入社。在籍中に、在オランダ大使館出向。その後、組織・人材コンサルティングを専門とするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年には、38歳で日本法人代表取締役社長に就任する。以降、キャドセンター代表取締役社長、デジタルスケープ(現イマジカデジタルスケープ)取締役会長、デジタルハリウッド代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より株式会社Indigo Blueを本格稼働。

 

 

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