947号「船底に穴、水をかき出すのに忙しくて蓋ができない」(メールマガジン「人事の目」)

「出生率1.26、経済活力に危機」。(6月3日の日経新聞朝刊1面の見出しから)

出生率の低下が社会的な関心を集めるようになったのは、1990年のいわゆる「1.57ショック」からだそうです(内閣府資料から)。そこから33年です。この間の出生率の推移をみると(多少持ち直したときもありますが)傾向としては右肩下がりです。

経済的な問題から出産育児をあきらめないように補助する。当事者からするとありがたいですが、そういうことではないんじゃないか、と思います。世論調査(令和4年)で世相の悪いイメージを問う設問に対して、「ゆとりがない」「自分本位」「無責任の風潮」が上位に来ています。ゆとりをもった生活する収入がないことがこれらの根源にある、だから補助金を支給、という展開になるのはわかります。ただ、この施策だけでは足りないのです。

“船底に穴が開いているが、水をかき出すのに忙しくて船底の穴に蓋をすることができない”。

今の日本を見るにこんな状態に思えてなりません。補助金という名の水をかき出すための桶を配っている感じがします。船底に蓋(ふた)をしていません。必要なのは蓋(ふた)です。

私はこの蓋(ふた)は「希望」だと思っています。ここで希望が無いのはなぜか?という論理的な分析をするつもりはありません。論理的アプローチを採ると経済的な問題が上位に来て、「桶を配る」展開になってしまいます。必要なことは“無い”ことの分析ではありません。希望を創ることだと思います。

人は合理的に考え、合理的に判断しているわけではありません。行動経済学が示す通りです。多くの場合、感覚・感情的に判断し、その判断を正当化できる合理を追って形成しています。最初にくるのは“感覚・感情”です。

希望づくりの第一歩はこの“感覚・感情”を明るくすることだと思います。それは”大人たち“が笑うことだと思っています。家庭であれば親、学校あれば先生、職場であれば上司、行政であれば首長、国であれば総理、国務大臣。こういう人たちが笑う。まずはここからです。どんなに苦しい状況であっても上が笑う、それだけでかなり変わります。

停滞している会社ではこんな会議が多いです。停滞の理由を分析し対策案を講じ、その進捗を確認。結果責任を問い、幹部の眉間に皺が寄る。停滞しているからこそ、上は明るく振る舞い、笑いましょう。まずはそこからです。三井物産の会長、社長、日本経団連副会長を務められた八尋俊邦さんやダイエー創業者の中内功さんがおっしゃっておられた「「ネアカ のびのび へこたれず」、これは上の役割を担うものたちのあり様として再確認すべきですね。

ChatGPTの登場により、これからは人間ならではの感情・感覚を意識した行動、施策がより求められるようになると思っています。まずは「笑う」。希望の気配がしてくるはずです。


おまけー1:笑うことを推奨というとスマイル党を思い出します。マック赤坂さんのドキュメンタリー映画もかつて見ました。改めてHPを見てみるとなかなか良いことを言っています。

おまけー2:かき揚げそばでかき揚げをトッピングしてしまいました・・・、しかし、その昔、天丼を頼みながら“ごはんつけてください”と言っていた知人を思い出して、“それよりはまし”と笑いました。(小さい)



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