987号「何かを言われるからやらない、はない」(メールマガジン「人事の目」)

「不適切にもほどがある!」というドラマをNetflixで観ています。演出をめぐるネット上の論評はともかく、時代設定となっている1986年に社会人2年目だった私にとってはとても面白いです。私と同世代の人たちがSNS上で絶賛しているのがわかります。

主人公の1986年の“不適切”おやじが2024年の“正論”マンとの口論の中で、「昭和、昭和ってまるで悪みたいに言うけどさ、景気は今よりよかったぜ!」と言い放つシーンがありました。これに対して、“それを言われるとなー”といって正論マンが引き下がります。このやりとりを見て思うところがありました。

私はコンプライアンスについては肯定派です。ただしそれを意識し過ぎて、多くの企業、団体で、何も指摘されないことを意識し過ぎているように思います。これは大変よろしくないと思っています。

何かを変えようとしたら必ず何かを言われるものです。それを怖れていては何もできません。元陸上選手の為末大さんが2022年に日本社会は「なにかあったらどうするんだ症候群」に侵されていると発表されていましたが、その通りだと思います。

現在わたしは人事制度の抜本的な改革をするときだと提唱しています。これまでの日本の人事制度はゼネラリストの管理職を育成・処遇するための制度でした。これを、プロフェッショナル(特定の専門領域で活躍する人)を育成・処遇する制度に変えようというものです。管理についても専門性の一つとして捉えてはどうかと考えています。いわゆる管理職、リーダーについてはプロフェッショナルから任命されることもあるでしょうし、管理の専門家の中から任命されることもあるが、いずれも任期制にすべし、と考えています。

これを進めようとすると、必ず出てくるのが「定年間近の人たちがいる。こういう人にいまさら専門領域を持てと言われても・・・」という話です。この人達からネガティブな意見が出ることを怖れて、制度導入が停滞しがちです。何をするにしても、反対意見は出ます。反対意見がでるからやらない、ということはないはずです。仮にその反対が多数であったとしても、あらゆる角度から検討したリーダーが将来のために必要であると判断するなら、実行すべきだと思うのです。

主軸となることは進める。一方で反対している人たちの主張に耳を傾け、反対理由が少しでも小さくなるような施策を考える。それが改革の進め方ではないでしょうか。この「定年間近の人が・・・」については、時限立法的に“ゼネラリスト職群”を設置して、その人達が定年退職するまでは主たる人事制度の外で取り扱うようにすればよいと思います。

何か新たな取り組みをするときに、リスクは?懸念点は?投資回収は?という質問を投げかける上司がいます。新たな試みなんですから、そんなものやってみないとわからないことばかりです。机上でいくら議論したところで、すべてを網羅することは不可能です。これらの項目についての検討は必要です。ただ、そこに固執して前に進まなくなるのは、まさに“なにかあったらどうするんだ症候群”そのものです。

やろうと思ったらやる。違うな、と思ったらすぐに“ごめん、間違えた”。これでいいじゃな
いですか。“なにかあったら”、全力で対策を考える。それでいきましょうよ。


おまけー1:日経産業新聞が2024年3月をもって休刊します。ここで2010年からコラムをほぼ毎月書いてきましたが、休刊に伴いおしまいです。最終回が先日掲載されました。「トップたる物の心得」です。
「Nikkei 柴田励司」で検索を。

おまけー2:花粉症がやばくなってきましたね。マスクに噴霧するお薦めスプレーです。
https://viearome.randcompany.jp/items/80942262

おまけー3:若いころ痩せていた人が中高年太りして細いの眼鏡をかけると「さだまさし」そっくりになりますねー。

 

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