3つの「タイムリミット」

 緊急事態宣言が解除された。人も企業もポストコロナの「ニューノーマル」に向けてそろりと動き出している。
他方、多くの日本企業では社長交代で新しい経営体制がまさに始まろうとしている。

そんな状況下、人事部門は3つのタイムリミットを意識すべきだ。即ち、①新社長が就任メッセージを発信する時、②緊急避難的に開始した在宅勤務が常態化した時、③全社的に危機管理を緩める時、である。

①新社長による就任メッセージ発信

 日本企業の人事は、時間をかけて精緻さを求めることで「人事制度」を作り込むことに長けている。逆に限られた時間内で新社長の意欲的な発信には及び腰になり勝ちだ。欧米系グローバル企業の拙速とも言えるほど大胆な施策導入に比べ、遅々として進まない人事改革を象徴する「それは難しいですね」という呟きが今にも聞こえて来そうだ。先ずは導入のプロセスに重きを置き過ぎず、着地点にコミットすることで、人事施策を何のためにやるのか新社長としっかり握り、①のリミットにジャストミートして欲しい。

 

②在宅勤務の常態化

 先だって外資系企業のマネージャーたちと話す機会があった。「個」に焦点を当てた施策をベースにビデオ会議等を駆使した在宅勤務は全く問題が無い、このまま続けたいとの意見が大勢を占めた。今や日本企業の若手層も大いに共感するのではないか。働き方の「ニューノーマル」について、自己管理と成果主義を期待する若手層と今までの延長線で勤怠管理も求めるであろう行政との間で、明確な対応が迫られている。②のリミットは待ったなしだ。

 

③全社的に危機管理を緩める

 どの企業でもカンパニー・BU制のもと遠心力が効き過ぎる傾向が強い。厚くなる一方の組織間の壁を打破し、全社横断的にリソースを最適化する動きも試みられている。今回のコロナ禍での危機管理は全社的な求心力を高める機会でもあった。
 ③に際し本社組織がリーダーシップを大いに発揮し、遠心力と求心力の良いバランスを確保したと言い切れれば嬉しい限りである。


鈴木 敏中(Indigo Blue 取締役)
 1973年ソニー株式会社入社。本社及び国内・英米子会社に勤務。人事諸制度の導入、グローバルビジネスの成長基盤確立、生産統合会社設立などをリード。
 2002年以降、ファイザー、サノフィの日本法人において、M&A後の統合実現、全社的な企業文化醸成プロジェクトなどを推進。2013年株式会社BWFJカンパニーを設立。代表を務める。
ソニープルコ生命(現ソニー生命)総務部長、ソニー株式会社パーソナルネットワークカンパニー人事部長、ソニーEMCS株式会社執行役員人事・総務担当、ファイザー株式会社常務取締役人事・総務担当、サノフィ株式会社取締役副社長シェアードサービス担当等歴任。


 

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