Vol.284 "priceless"

金曜日の雨、凄かったですね。
確かに雲行きは怪しかったのですが、まぁ大丈夫だろうと
傘を持たずに街中にあるボックス型ATMに出掛けたところ、そこでやられました。

ちょうど給与振り込み日だったせいか、ボックス内に入りきれないヒトが
外に結構並んでいました。そこに豪雨。
あっと言う間に、みんなびしょ濡れです。

先頭に立っていた老人が傘を開き、
後ろのフリーターとおぼしき男性に「はいりませんか。」・・・と、
目の前の見知らぬ主婦が「わたし、傘とってきます!」。
しばらくして、その主婦が傘を2本持ってきてくれたので、
今度は私が後ろの見知らぬ主婦に「どうぞ」と相合傘。

この間、前後の主婦と「すごい雨ですね」「びっくりしましたね」
「すぐやみそうですね」・・・と超他愛のない会話。
時間にして5分くらいだったと思うのですが、ホッとするひとときでした。

このホッとするひとときは、まさに”priceless”。
マスターカードのCMでおなじみのこの言葉、
「値段がつけられないほどに貴重」ということですね。

他にも、「嬉しくなる」「楽しくなる」「元気づけられる」「充たされる」
「わくわくする」「じーんとする」「感心する」「(・・・しなくちゃ!と)ココロが熱くなる」
・・・というひとときも同じく”priceless”だと思います。

世の中に「生活提案」という言葉が溢れています。
Googleで「生活提案」と検索すると1800万以上ヒットしました。
これは、生活提案しないとモノが売れない時代になったと商品や
サービスの担い手たちが認識しているからだと思います。

国全体の経済水準があるレベルを超え、生活必需品が普通に揃うようになると、
自立した生活者は、「買う」という行為を通じて、その商品やサービスの
「機能」以上のことを求めるようになります。
“モノ”ではなく”コト”と言われる所以です。

私は、その”コト”の中でも最上級なのが、
“priceless”なひとときではないかと考えています。
然るに、この”priceless”なひとときを演出することができてこそ、
生活提案ではないか。

年収200万円以下の方が1000万人を超えたという今、
単に安さを求めて買っている生活者もいることは否定しません。

しかし、そうであっても”priceless”なひとときを求めないわけがありません。
同じ機能であれば安い方がいいのは当たり前です。
しかし、ここに生活提案という付加価値があり、
それで安いと「お得感」があるわけです。だから売れる。
単に安いから売れているわけではないはずです。

“priceless”と感じるのは生活者本人です。
商品やサービスの担い手、つまり企業は、
そのきっかけづくりをしているにすぎません。
そこを勘違いして、これは便利だー!、優れているー! だから買えとか、
お得だー!だから買えと主張されると、自立した生活者であればあるほど
冷めます。
便利だ・・、とかお得だ・・・と感じるのは生活者です。

言われるほど、企業の”売らんかな”が見え見えなので、
“priceless”から遠くなります。
売上を上げることに目を奪われすぎると、どうしても企業エゴが出てきます。
結果として、”priceless”とは程遠くなり、
結果として生活者から見放されることになります。

そうではなく、商品、サービスの担い手と生活者が協働して
“priceless”なひとときを創っていく方にヒトは流れていくのです。
これは水が高いところから低いところに流れていくのと同じです。

協働など関係なく、商品、サービスの提供側が
マーケットを支配する構造になっている業界もまだあります。
天然資源のように有限で代替がないものについては、やむを得ません。
しかし、昔の名残だけでそうなっている業界は必ずや変わります。
自立した生活者たちがそれを強く求めるからです。この流れを止めることはできません。

変わらないと企業としては衰退します。
そうわかっていても、昔ながらの意識で働いているヒトがたくさんいると、
その組織行動が変わりません。
お客様との間に見えない線を引いて、かしこまっていたり、
ココロの中でお客様を馬鹿にしていたりしては、協働などとてもできません。

リーダーはここを注視して、変えるべきは変えるという決断をしないと
“昔ながら”を断ち切るのは難しいかもしれません。

おまけー1:いい映画はまさに”priceless”。

TSUTAYAで名作3枚3000円というキャンペーンをやっているので、
視察に出掛けるたびに購入。(結構たくさん揃ってきた・・・)

最近買った中では「アンドリューNDR114」がオススメ。
移動中に途切れ途切れで見ていた作品だったので、じっくり見れて満足。

おまけー2:宮部みゆきさんの「火車」を読みました。

これも”priceless”。ひさしぶりに一気に読んでしまいました。
これって映画化されないのかな。

おまけー3:しかし、”priceless”中の”priceless”といったら「記憶」でしょうね。

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