1060号「『成長から豊かさ』へのシフト」(メールマガジン「人事の目」)

お盆休みはいかがお過ごしでしたか。この時期は社会全体が一斉に「停まる」感覚があります。年末年始以上に静まり返るように感じます。私自身も数日間、立ち止まって過ごしました。

それにしても、この猛暑には驚かされます。まさに「地球沸騰化」という言葉がぴったりです。生態系のバランスが目に見えて崩れ始めており、このまま手を打たなければ、ケビン・コスナー主演の映画『ウォーターワールド』(1995年)の世界が現実になってしまうのではないか… そんな不安を覚えます。

最近、ジェイソン・ヒッケル著『資本主義の次に来る世界』(2023年)を読みました。内容を要約すると、次のような主張が展開されています。

  • 経済成長の追求は、資源枯渇・気候変動・生物多様性の喪失を招いている
  • 成長を前提としない仕組みへの移行が不可欠である
  • GDPで国の豊かさを測るのは誤りである
  • GDPが示すのは「経済規模」であって「豊かさ」ではない

ページをめくるごとに「確かにその通りだ」と頷かされました。異常気象が世界各地で頻発する今、「成長から豊かさへ」と発想を転換する必要性を強く感じます。

企業の世界でも、変化の兆しが現れています。

かつては業績や数字に直結するKPIだけが重視されてきましたが、近年ではESG、従業員エンゲージメント、DE&I、福利厚生といった要素が「豊かさ」を示す指標として注目されるようになりました。従業員や社会、環境の満足度こそが、長期的な競争力を左右するとの認識が広がっているのです。

特に若い世代やグローバル市場では、「給与だけではなく、働きがいや社会への貢献」を大切にする姿勢が当たり前になりつつあります。

もっとも、「豊かさ」という言葉は一様に定義できるものではありません。ある人にとっての豊かさが、別の人にとってはそうでないこともあります。そもそも、食糧や住居といった基本的条件が満たされなければ、豊かさは成立しません。さらに、今が一見満たされていても、それが環境や社会を破壊し、将来に持続できないのであれば、それは真の豊かさとは呼べません。

したがって、「この基準を満たせば豊かである」と一律に示すアプローチではなく、社員一人ひとりが自分にとっての「豊かさ」を考え、その実現に向けて行動することが重要だと思います。問題は、昭和世代の幹部層です。彼らは「成長」志向を当たり前として育ってきました。良い悪いではなく、それが時代の常識だったのです。私自身も同じ経験をしてきたので、よく理解できます。

頭では理解していても行動が伴わない・・・ そこには「認知と行動のギャップ」があります。このギャップを埋めるために、幹部クラスを集めてまずは語り合い、行動を変えていくための具体的な習慣づけを考える場(ワークショップ)を設けましょう。

ワークショップでは、「豊かさ」へのシフトは売上の減少や品質の低下を意味しない、という前提を確認した上で、自分はどう行動すべきかを深く考える機会とします。さらに、この取り組みを社内に周知することで、社員への明確なメッセージとなるでしょう。

「成長」から「豊かさ」へ――この移行は決して容易ではありません。しかし、一歩ずつ、できることから始めていくことが大切です。

おまけー1:アラフォー以上になったなら、会社に依存せずに仕事ができるスキルを身に着けておきましょう。
アラフォー以上の学び直しの朝活、「PHAZEリカレント16期」(10月8日開講)の説明会をやります。

直近では8月29日(火)の18時からです。(私が説明します。)
https://phaze.jp/

おまけー2:“ぼく、どざえもん” と言う欧米系の男子あり。(ぼく、ドラえもんの間違いだと思う)




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