923号「仕事ができるだけでリーダーにしてはいけない」(メールマガジン「人事の目」

優れたリーダーは仕事ができることは言うまでもありません。人間的に魅力があり、あの人と一緒に働きたい、と思われています。組織におけるリーダーは社長であったり、本部長であったり、部長、課長という役割を担っている役職者たちです。この人たちの多くが(敢えて全員とは書きませんが)“あの人と一緒に働きたい”と思われるような存在になると、素晴らしい組織になると思います。

問題はその役職者は誰かが決めたリーダーであることです。一緒に働くメンバーにしてみると、自分たちが選んだ人ではないのです。小さな組織で誰もがその貢献や実力を認めている人ならまだしも、極端な話、その素性も実力もわからない人が「(任命された)“部長”です。」と言って現れたところで、そこでは関係性がゼロです。むしろ、野心があったり、わが身が不遇だと思っている人にしてみると、マイナスの関係性からのスタートとなります。

社長や人事責任者が、なぜ、その役職者を選んだのかについて説明する。これは最低限必要なコミュニケーションですね。外資系企業では上位者の人事異動に際してはCEOからメッセージが出ることが通例です。退任者の功績を称え、新任者の選任の理由と期待をトップメッセージとして全社に配信します。日本企業においては人事報だけというのが多くの企業の実態でしょう。ここは外資に学ぶ点だと思います。

ただ、このメッセージを読んだから、メンバーたちが“一緒に働きたい!”とはなりません。“へー、そうなんだ。”というレベルの反応でしょう。新しいリーダーについての情報を得たというだけです。(それでもやらないよりはやった方がいいに決まっていますが。)

リーダーはオン・ボーディングにあたり、自ら信任を得ていかないといけません。“あの人と一緒に働きたい”と思われるようになるか。これは日々の言動にかかっています。

信任を得るために、メンバーたちに寄り添い、彼らの不満への共感を示し、みんなは悪くない、上や会社に問題があるという態度を示す人がいます。いわば迎合です。こういう動きをする人が出てくると、組織に負の波動が生まれます。要注意です。ただ、このやり方が最も短期的にメンバーとの距離を縮めやすいやり方なので新任者がとりがちな行動です。新任者のオン・ボーディングの際に注意しておいた方がよいでしょう。

これとは逆に自分の権威を振りかざし、マウンティングする人もいます。異を唱えそうな人を、最初に徹底的に上から攻撃し、その様子を周囲に見せ、メンバーたちに服従を求めるやり方です。現状に問題意識を強くもっている人がやりがちです。悪意なく、このやり方でないと変わらないと信じているのです。これはそのマウンティングリーダーがいる間に改革が実行されたとしても、やらされ改革になるので長続きしません。このリーダーがセクハラ、パワハラを仕込まれるなど足元をすくわれる可能性もあります。こちらもオン・ボーディングの際の注意事項の一つです。

仕事ができるだけでリーダーにしてはいけません。人間性。これなしに良いリーダーは生まれません。

オーナー系企業でオーナー一族の誰かをオン・ボーディングさせる際には、その人の人間性を、事前に高めておくべきです。これはマストです。雇われるという経験、組織の不条理を体験させた上でオン・ボーディングさせる。これをやりませんと、誰も信任していない(”オーナー家だからしょうがない“)というリーダーになってしまいます。その人も不幸です。裸の王様まっしぐらです。


おまけー1:オーナー系企業の人事に関わる方を対象に勉強会を始めます。名付けて「格さんの会」!
(オーナーを守る“格さん”的存在の人事になろう、という意味が込められています。)

オーナー企業においては「オーナーへの過度の忖度」が生まれやすく、指示待ちになりやすい。オーナーのガバナンスを維持したままでいかに自律型の組織に変革させていくか、このテーマを検討して参ります。

事務局は再春館製薬の人財部長の石田さんです。
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