仕事を選択する権利と、企業の人事権
「キャリア権」という考え方があります。
キャリア権とはその提唱者である諏訪康雄先生(法政大学名誉教授・元中央労働委員会会長)によると、「働く人や働こうとする人が、意欲と能力に応じて希望する仕事を選択し、職業生活を通じて幸福を追求する権利」のことです。
とある方を通じて、キャリア権を法制化しようとする動きを知りました。会社は人事権を行使します。配置転換や評価、降職、採用などなど。これに対して、働く側のキャリアについての主張を強化するために法制化しようという動きです。
お話を聞き、共感するところがありましたので、このたび「キャリア権」法制化を目指す会(代表者 弁護士高井信夫)が発行する紀要という冊子に私案を寄稿しました。
“働く人や働こうとする人が、意欲と能力に応じて希望する仕事を選択”。当初、これは当たり前のことではないか、と思いました。しかし、世の中全般を見渡すと、これを当たり前と思える人は大変恵まれている、それが実態ですね。「キャリア権」を改めて主張することの意義を理解しました。
しかしながら、私はこの2つの概念を会社の中での対立構造にするのは現実的ではないと考えています。会社が業務上の必要性から命ずる異動を、個々の社員がキャリア権を振りかざして拒絶するような事態が頻発すると、適切な組織マネジメントができないからです。
もちろん、本人の意に全くそぐわない配置転換命令に対して、抵抗できる権利を社員に与えるべきという主張はわかります。話を全く聞いてくれない会社も世の中にはそれなりにありますから。ただし、こうしたブラック企業対応で真っ当なマネジメントをしている会社まで影響を受けるのはいかがなものかと。
仕事を選択できるだけの、ポータブルスキルと心の持ちよう
私の主張はこうです。
- 意欲と能力に応じて希望する仕事を選択するには、当人にそれなりの「実力」が求められる
- 大企業に勤める人の多くがその会社の仕事しかできない状態になってしまう(飼い殺しとも言える)
- リモア環境下での仕事、今後来るAIとの共存を考えるに会社や部署を選ばず仕事ができる「実力」を鍛える場を用意すべき
- その鍛えるべき「実力」とは以下のポータブルスキルと心のもちようである
- わかりやすい文章を書く力
- わかりやすく話す力
- 情報を集める力
- 段取りをつける力
- 表情を使って語り、表情を読む力
- 相手の期待を予見し動く力(ホスピタリティ)
- 自分のやる気を持続する力
- 他責にしない思考
- 理と情のバランス
これらを鍛える場を国策(雇用保険を原資に)でやる。それが私の主張です。企業は自社のビジネスを遂行するために人材を活用します。これを追求すればするほど、“自社のため人材”を育成することになってしまいます。かつてない変化が予想される今、国の最重要資源である「ヒト」の学び直しを企業の自助努力でやるのでは限界があると思っています。
もちろん、自分でできることは進めておこうと思っていますが。(明日の朝学の会のテーマにします。)
おまけ
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基本的に「メルマガ」のテーマについて柴田が補足・解説し、ご参加のみなさんと議論する1時間をイメージしています。
手探りながら始めてみます。(月会費:5,000円です。ごめんなさい。)
執筆
Indigo Blue 代表取締役会長
柴田 励司(Reiji Shibata)
上智大学卒業後、京王プラザホテル入社。在籍中に、在オランダ大使館出向。その後、組織・人材コンサルティングを専門とするマーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(現マーサージャパン)に入社。2000年には、38歳で日本法人代表取締役社長に就任する。以降、キャドセンター代表取締役社長、デジタルスケープ(現イマジカデジタルスケープ)取締役会長、デジタルハリウッド代表取締役社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ代表取締役COOなどを歴任。2010年7月より株式会社Indigo Blueを本格稼働。