890号「スラッシュワーカーの時代その3」(メールマガジン「人事の目」より)

「スラッシュワーカー」シリーズの最後。
“スラッシュワーカーが主流になったときに、どうマネジメントするか?”です。

スラッシュワーカーとは特定の部署の仕事だけでなく、社内横断の業務や、複数の部署の仕事を同時に担う働き方をする企画系の人のことです。10年度にはスラッシュワークが例外ではなく主流になるだろうと私はみています。正社員だけでなく、副業で自社の仕事をしてくれている人も入ってくるでしょう。そうなったときに、スラッシュワーカーをどうマネジメントすべきか、私見を書きます。

まず、スラッシュワーカーには上司という存在がいません。上司ではなく“発注者”です。言い方を変えると“クライアント”になります。伝統的な組織においては、社長を除くとみんなに上司という存在がいます。それがいません。そうなると、評価は誰がするの?ということになりますが、評価をするのは“クライアント”、つまり社内の発注者ということになります。

その評価も伝統的な評価とは全く異なります。提供しているサービス(仕事)に対して、満足したかどうかのフィードバックになります。「満足していない」、「どちらかというと満足していない」場合にはその理由を書いてもらいます。

その結果が報酬や昇進昇格につながるということはありません。スラッシュワーカーはそのフィードバックを得て、自己研鑽に努めます。多くの“クライアント”の満足が高いスラッシュワーカーには仕事の依頼が殺到しますが、満足度が低いスラッシュワーカーには声がかからず失業状態になりますので。

スラッシュワーカーの報酬はベーシックインカム的な基本給と関わった仕事の出来高になります。伝統的な賞与はありません。仕事の内容によっては成果報酬的な仕組みになることもあります。

スラッシュワーカーへの仕事の依頼のハンドリング(スケジューリング)、案件ごとの報酬の管理、評価のフィードバックを行う「マネジメント・オフィス」は必要となります。マネジメント・オフィスの責任者はスラッシュワーカーのメンター的存在となります。指示命令はしませんが、相談にのったり、必要に応じた支援をしたりします。ちなみに、仕事を“受ける”“受けない”の判断はスラッシュワーカー本人がします。

スラッシュワーカーにもその実力や業務範囲からレベルがあります。2段階もしくは3段階程度でしょう。段階によって単価が異なります。発注側は仕事の難易度、予算を考え、適切なスラッシュワーカーのアサインメントを「マネジメント・オフィス」にお願いすることになります。スラッシュワーカーの“昇格”については実績からマネジメント・オフィスが判断し、当人に打診します。単価が上がると受注しにくくなることもありますので、昇格するかどうかは最終的には当人が決めます。

スラッシュワーカーは「仕事のプロフェッショナル」です。そうなると、(昭和の塩漬けの)労働法の制約がない方が自由に動けますから、個人事業主として、社会保険と福利厚生を用意するパッケージになるでしょう。個人事業主なのでNDA(秘密保持契約)を結んだ上で他社の仕事もすることになります。

超優秀なスラッシュワーカーには社外からもたくさん声がかかります。いかに、超優秀なスラッシュワーカーに自社のために時間とエネルギーを費やしてもらうようにするか。これが新たなA&R(Attraction & Retention)になります。その鍵はベーシックインカム的な基本給の多寡ではなく、“面白い仕事かどうか”になります。

10年後にこうなっているとしたら・・・、今から手をつけるべきことはたくさんありそうですね。


おまけー1: 瀬戸内芸術祭2022に出かけてきました。台風で海に流され、破損した草間彌生さんのオブジェ「南瓜」(直島)のところにミニチュアの南瓜を発見。近くにいた係の人に「これなかなかユーモアあがっていいですねー」と言ったところ、「あれ、誰かが勝手につけたん。接着剤が強くてとれん。」とのこと。

おまけー2:直島は良いところばかりでしたが、その中でも最も良かったのは「Lee Ufan Museum」でした。
ココロがすーっと洗われる感覚がありました。

おまけー3:小豆島の「醤の郷現代美術館」は超お薦めです。若い才能から巨匠まで展示されています。
ちなみに私が最も気に入ったのは「あみりょうこ」さんの版画でした。
https://www.mocahishio.com/


 

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