919号「リスキリング、その実現性を高めるには」(メールマガジン「人事の目」より)

岸田内閣が5年で1兆円投じるとしているRe-skilling(リスキリング)について思うところがあります。

リスキリングとはなんぞや、という方は「自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング」(後藤宗明著)をお読みください。リスキリングの歴史的背景やその必要性が網羅的にまとめられています。

この本の中でリスキリングとは、「社員が新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」と定義しています。確かに近い将来、反復性の高い業務については、その担い手が人からAIを搭載したロボットに置き換わる可能性が高いと思います。“AIに仕事を取られた”ときに失業(これを「技術的失業」というそうです。)しないように、成長分野で仕事ができるように国が支援するというのはありがたいことです。

技術的な失業者が増えると社会不安が増大します。成長産業が増えないことには国力が低下します。国の目線からのリスキリングはここに問題意識があります。一般論としての経営者の目線も方向性としては同じです。成長領域での事業展開(売上増)をしたい、コスト削減を期したい。そのために社員にリスキリングをさせたい、と。

ただ実際にリスキリングの対象となるのは個々の社員です。個々の社員がリスキリングを自分事として捉えて何かを習得しようと思わない限り、何も結実しませんん。

広島県庁商工労働局が主催する「自社を環境変化に対応できる組織に変える ~広島県リスキリング研修プログラム~」の総合プロデュースをしています。このプログラムには広島県内の企業の経営者、管理職の方々が参加され、リスキリングの背景、動向、最新トレンドについて、その第一人者から学んだ上で、自社の組織を環境変化に適応させるためには?というテーマで議論を重ねています。

第一クールが7月から9月、第二クールが10月から12月と2回やってきました。いずれの回でも、自社の組織を環境変化に適応させるために必要なことは、安直にデジタル系のスキルトレーニング機会を展開するのではなく、その前にやることがあるという問題意識が語られています。

・世の中の変化についていけない(変化にすら気づかない)社員が多い
・変化そのものを嫌う社員が多い
・変化についての情報も組織内に浸透していない
・そもそも、自分のことしかやらない(協調性に欠ける)、エネルギーが内向き、
 チャレンジ精神が希薄、成長意欲がない等、社員のやる気に課題がある

自社を環境変化に適応する組織にするには、まず「ヒトの問題」に着手すべし、という見解です。その通りだと思います。第二クールは提言づくりの最終フェーズですが、こちらも同様の問題意識が前面に出ています。

何をやるのか(What)の前に、何故やるのか(Why)。このWhyを自分軸で考える人を増やす。これこそがリスキリングの実現性を高めるために最も重要なことだと思います。そのための施策を講ずること、これこそが、リスキリングから遠回りのようでいて実効性が高いことだと考えます。


広島県庁のプログラムですが、第二クールの参加者たちが12月3日(土)の13時からZoomで公開提言をいたします。傍聴は無料です。できるだけ多くのみなさんに見ていただきたいと思っています。

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/72/reskilling-event-kenshu1-term2-zoom.html


おまけー1:コロナの後遺症を自覚しています。ふだん、ふつうの人の3,000倍くらいのやる気なのですが、まだ5倍くらいに留まっている感じです。(早起き生活、早朝ジョギングは再開できるようになりました。)

おまけー2:コロナで寝ているときに「Wish List」を考えてみました。第一位は「ウミガメと泳ぐ」、第二位は「小田和正さんのコンサートに行く」、第三位は「兵馬俑を見に行く」でした。普段考えないことを考える良い機会になったと思っています。

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