962号「組織を健全に機能させる”イネーブラー”」(メールマガジン「人事の目」)

自分が忙しく働けているのは、自分のために時間を空けてくれている人たちがいるからです。その人達への感謝を忘れてはいけません。

その人たちのスケジュールは埋まっていません。空きが多い状態です。それを“遊んでいる”とか“ヒマ”と批判してはいけません。組織が健全に機能するためには、目一杯活動している人たちを支える人が適度なバランスで必要なのです。

この支える人たちのことを「イネーブラー:enabler」といいます。「イネイブラー」と「イ」が入っている言葉になるとアルコール依存症など嗜癖やその他の問題行動を陰で助長している身近な人のことをいうようです。これとは全く違います。良きことができるように誰かを支援する役割を果たす人のことです。

イネーブラーの代表格は秘書やアシスタントです。主たる役割はスケジュール調整や庶務的なことです。言われたことしかやらない、と批判してはいけません。お願いしたことをミスなく遅滞なくやってくれるのであればありがたいはずです。人間なので多少のミスもあるでしょう。ただ、8割方ちゃんとやってくれるのなら感謝です。お願いした以上のことを先回りしてやってくれるようなホスピタリティある秘書やアシスタントがいたら、それはもう感謝を越えて褒賞対象です。

秘書やアシスタント以外にもイネーブラー的な貢献をしてくれる人たちがいます。まずは「チアリーダー」です。

忙しく働いている人と同じ役割の人なのですが、本業の評価が飛びぬけた存在ではありません。ただ、そのキャラクターから場を盛り上げる役割を果たしています。天然やずっこけキャラで何かと“いじられる”存在です。“いじる”方も愛がある“いじり”をします。自然と組織に笑いが生まれます。

こういう人について、目に見える成果を上げていないとして批判してはいけません。本業での仕事ぶりについては相応に評価し処遇すればよいのです。組織の潤滑油として貢献してくれていることには感謝しましょう。

日本の人口動態を考えると、新たなイネーブラーとして「コーチ/メンター」「インパクトプレイヤー」を認知させていくのがよいでしょう。「コーチ/メンター」とはその名のとおり、忙しく働く人たちにとって、思考の“壁打ち”相手になったり、アウトプットのレビューをしたり、悩み(愚痴)を聞くのが役割です。「コーチ/メンター」の存在により、忙しく働く人の潜在力が最大化されます。

「インパクトプレイヤー」とは2019年のラグビー日本代表で使われた言葉です。ベンチウォーマーではなく、ここぞというときに投入されることで試合の流れや局面を変える役割を果たす選手のことです。職場においても、何らかの理由により人手が足りなくなったとき、タスクが拡張されたとき、チームの雰囲気が停滞したときなどに投入され、チームとしての結果につなげる役割です。

「コーチ」も「インパクトプレイヤー」も一定以上の実力と経験が必要です。役職定年者や多くの人をマネジメントする役割には向いていないが相応の実力がある人のネクストキャリアとして最適です。これまでは、“忙しく働いている人”のみが評価され、それ以外の人たちは軽んじられたり、批判の対象になりがちでした。

ちがいます。

組織を健全な状態にするには適度なバランスが必要なのです。目に見える成果だけを追っていくと、氷山の海面下の部分がどんどん細っていきます。当然ながら、どこかのタイミングで氷山そのものが海中に沈むことになります。

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」 サンテグジュペリの「星の王子様」の一節を思い出します。


おまけ:今後リーダーを目指す若手の方々を対象とした「異業種Futureリーダー共創塾」を開催します。
「イネーブラー」としてのリーダーの役割、“優秀なプレイヤー”がリーダーになったときに陥りやすい落とし穴など、これからリーダーになるであろう方々にわかってもらいたいことをお伝えします。

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